2023年8月19日 東京交響楽団 サントリーホール
指揮 鈴木優人
合唱 東響コーラス
中江早希(ソプラノ)、澤江衣里(ソプラノ)、櫻田亮(テノール)
メンデルスゾーン 交響曲第5番「宗教改革」、第2番「讃歌」
8月に開催される東響の定期演奏会。
暑さ真っ盛りのこの時期に定期演奏会をスケジュールしているオーケストラは希少。聴きたい公演がパッタリとなくなり、ある意味ヒマな8月、クラヲタにとってはとても貴重なコンサートと言える。
チケットは完売。そう、需要あるんじゃないの?
夏休みもいいし、お子様向けコンサートもいい。だが、ちゃんとした演奏会がほとんどなくてつまらないと思っているファン、結構いるのではないか?
他のオーケストラ事務局の方々、是非検討されたし。活動の運営や計画について、当たり前と思っている既存の概念を一から見直してみるというのは、大切なことでしょう。営利を追求するしっかりとした企業なら、どこもみんなやってるよ。
それにしても本公演、いいプログラムであり、そして素晴らしい演奏であった。
このプログラムの演奏に最適の指揮者を選定したのが、すべての要因であろう。
古楽、バロックからロマン派まで幅広く精通している鈴木さん。演奏を聴いて、作品のこと、メンデルスゾーンのこと、その時代について、しっかりと理解し、その考察を丁寧に落とし込んでいることが明瞭だ。
ひたすら素材の良さを引き立たせるアプローチ。ヴィブラートを最小限に抑えた極上の響き。合唱やソロとのバランスも絶妙で、曲のピークへと持っていく推進力、高揚感もたっぷり。
作品の理想的な姿を作り上げるその手腕は、何だかこの道一筋の職人気質を漂わせる若大将のようだ。うーむ、カッコいい。
最後に、演奏とは関係ないが、配布されたプログラムに掲載された記事の中で、音楽学者星野宏美氏の一部の論述が気になった。
氏曰く、メンデルスゾーンの交響曲の番号付けは完成された順番ではなく出版順であるため、年代を追った作風の流れに違和感が生じているほか、「讃歌」は20世紀に入って合唱付きの交響曲が出現したことで、ようやく交響曲と呼べるようになって、第2番に落ち着いたのだという。
以上の研究からすれば、既に学術的には番号そのものが意味を為しておらず、近い将来、メンデルスゾーンの交響曲第2番、第5番といった呼称は存在しなくなるであろうと、結論づけている。
そうかなぁーーー、と思う。
交響曲第2番、第5番といった呼称、これからも続くと思うよ、俺は。
呼称というのは、誰が決めるのか。学者か?
まあ学者が決めることもあろう。
だが、最終的に定着するかどうかは、世間一般の風潮次第なのだ。
たとえ学術的に意味を為していなくても、番号はあった方が分かりやすいし、今まで脈々と続いているその番号で、世間一般的には何の支障もない。ぶっちゃけ、制作順であろうが、出版順であろうが、そんなのどうでもいいんだ。
ベートーヴェンの交響曲第5番が、本人が名付けたわけでもないのに、いわば愛称みたいな形で「運命」と完全に定着している。ショスタコーヴィチの交響曲第5番「革命」もそう。
こうした世間一般的な定着に対し、「本来ではない」などと学術的に異議を唱えたところで、はっきり言ってそんなの誰も耳を貸さないのである。
と、俺は思うけど、どうよ。違う?