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2023/7/6 メデー(メデア)

2023年7月6日  ベルリン州立歌劇場
ケルビーニ  メデー(メデア)
指揮  オクサーナ・リーニフ
演出  アンドレア・ブレス
ソニア・ヨンチェヴァ(メデー)、チャールズ・カストロノーヴォ(ジャゾン)、ペーター・シェーネ(クレオン)、スラヴカ・ザメチュニコヴァ(ディルセ)、マリーナ・プルデンスカヤ(ネリス)   他


このオペラのタイトル名は、一般的に「メデア」と呼ばれている。
「埋もれていたケルビーニの作品を世に知らしめたのがマリア・カラスだった」というのは有名な話。このカラスの復活上演でイタリア語版となり、このためタイトルがイタリア的に「メデア」になった。
だが、元々はフランス語版で、初演もそうだった。(ケルビーニはパリに定住していた。)
今回のプロダクションはそのフランス語版。故に、タイトルはオリジナルの「メデー」とするのが適当であろう。
ところが、劇場HPでの演目ラインナップでは「メデー」になっていたが、当日の劇場に掲げられていた幟や配布プログラムでは「メデア」になっていて、不徹底。
テキトーだのう・・。

日本ではこれまで一度も全曲上演されていなかったらしいが、今年5月、日生劇場が開場60周年を記念し、ようやく初演を果たしたとのこと。
この時旅行中だった私は東京での鑑賞を逃したが、既にベルリンの本公演に行くことを決めていたため、残念な気持ちにはならなかった。
大きな声じゃ言えないけど、キャストはこっちの方が断然いいんでね(笑)。
(ごめんちゃい)
私自身は2007年にイタリアのパレルモ以来、16年ぶり2回目の鑑賞である。


タイトル・ロールのS・ヨンチェヴァ。ここ数年で一気に世界のトップ歌手に登り詰めたディーヴァ。リサイタルではなく、彼女が出演するオペラを観たいとかねがね思っていた。
その望みは、今年9月、日本で叶えられる。ローマ歌劇場来日公演の「トスカ」に出演予定だ。
だが、その前に私はここでメデー。

あくまでも個人的感想だが、彼女の声って何となくマリア・カラスに似ている気がする。カラスほどクセは強くないが。
ヨンチェヴァだって、「似ている、似てない」は別として、カラスのこと、カラスが歌ったメデアのことを、少なからず意識したことだろう。それくらい「メデアと言えばカラス」。歌唱上の参考にもしているかもしれない。

この日の歌唱は圧巻、さすがの貫禄を見せつけた。これぞヨンチェヴァ。演技も迫力満点。


アメリカのテノール歌手、カストロノーヴォ。
録音や映像で彼の声を聴いたことがあるが、生で聴くのは初めて。
ちなみに私が持っているブルーレイの「ラ・ボエーム」(E・ヴィヨーム指揮ロイヤル・オペラ・ハウスのライブ収録映像)では、ミミがヨンチェヴァ、ロドルフォがカストロノーヴォだ。
今回同じコンビで聴けるというのは、なかなか面白い。

さて、この日のカストロノーヴォだが・・・うーん、なんだかイマイチ冴えないか。
調子が悪かったのか、調子の問題ではなくてまあこんなものなのか、それとも私の耳の方がおかしいのか・・・。
もしかしたら、フランス語対応の問題ということもあるかもしれない。


指揮者リーニフ。
ウクライナ出身。バイロイト音楽祭で女性として初めて指揮をしたとして、一躍その名を世界に轟かせた。現在、ボローニャ市立歌劇場の音楽監督。同歌劇場と一緒に、この秋来日することが決まっている。

タクトは鋭敏で、キレ味がある。
あくまでも個人的に面白いなと思ったのは、彼女の指揮の場合、音楽の流れを誘導するというより、身振りによって像型、形状を示すかのような印象を受けたこと。もちろん、それはそれでありで、悪いとかそういう問題ではない。


演出について。
現代風の読替え。ただし、メデーは時代物の衣装を着ていて、魔女的な雰囲気を醸し出させている。
物語は、ジャゾンが征服した土地から収奪したとみられる品々の保管庫付近で展開。回り舞台装置を使って場面を転換。
詳細はよく分からなかったが、ディルセとジャゾンの関係が愛のある幸せな結婚ではなく、金目当ての政略的な結婚みたいな設定になっていて、相関的に複雑、ややこしい。
まあ、演出家があえて問題提起を込めて、読替えによって物語を意味ありげにするというのは、常套手法。なので、あまり「なぜ?」と深く考えてはいけない。「ふーん、そうなんだ」程度に見ておくのがいいだろう。

全体としては、可もなく不可もなく、まあまあの感じだったが、ヨンチェヴァの至芸、それからケルビーニの音楽を堪能できさえすれば、それでもうこの日のオペラ鑑賞の目的は達成されたようなもの。それで十分であった。