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2023/6/22 山響

2023年6月22日  山形交響楽団特別演奏会  東京オペラシティコンサートホール
指揮・ホルン  ラデク・バボラーク
スメタナ  交響詩「わが祖国」より プラニーク
モーツァルト  ホルン協奏曲第3番
ドニゼッティ  ホルン協奏曲
ドヴォルザーク  交響曲第8番


せっかくの東京特別演奏会にもかかわらず、山響さんにはホント申し訳ないが、山響というより完全にバボラークのホルン目当て。バボラークのホルン演奏が無かったら、そっぽを向いていた演奏会。
おそらく、オレみたいなお客さんは一定数はいたと思う。

逆に言うと、バボラーク起用のおかげで、名手の演奏に期待する一定数のお客さんもうまく取り込めた演奏会だったとも言えるのではなかろうか。

いいじゃないか、別にそれでも。動機はどうであれ、それでお客さんが演奏会に来る。チケット収入を確保し、結果的に山響の演奏に触れるきっかけになる。むしろ、良い戦略だったとも言えるかもしれない。

山響はというと、バボラークを単なる客寄せパンダにするつもりはきっとないはず。
2018年から3年間、同オケの首席客演指揮者であった後、今年度から「ミュージック・パートナー」という形で、再び指揮者陣の中に迎え入れた。これは、首席客演指揮者の時の功績をしっかりと認めたからだろう。


お目当てのホルンの演奏は、言うまでもなく惚れ惚れするくらいに上手い。「そうそう、ホルンて、こういう音なんだよな」という、大きな再認識。懐が大きく、雄弁でありながら、かつ素朴でほっこりとした優しい音色。さすが元ベルリン・フィル首席の実力は伊達じゃない。

ベルリン・フィル首席・・・彼がベルリン・フィルを辞めてもう20年以上も経つというのに、私なんかは今だに「ベルリン・フィルのホルン」のイメージがそのまんまだ。それくらい彼が率いたホルン群の音が鮮烈に耳に焼き付いている。

自分のコンサートのデータベースで調べてみたところ、私が最初に彼のソロを聴いたのは、1999年10月の都響ソリスト(指揮はE・インバル)。曲はこの日と同じモーツァルトのコンチェルト3番だった。その当時はミュンヘン・フィルの首席奏者。翌年に彼はベルリン・フィルに入団する。略歴を見ると、ミュンヘン・フィルの前に、18歳でチェコ・フィルに首席奏者となっている。若くして才能が開花した、いわゆる天才だったわけだよな。


今回、彼のソロ演奏だけでなく、近年の活動の軸となっている指揮についても見つめることとなった。
器楽奏者出身だからかどうかは分からないが、「音や響きを緻密に作り、指揮者らしく統率する」というより、オーケストラと一緒に演奏して、「音楽を共有し、楽しむ姿勢」というのが感じられた。ステージに近く、表情も見られる席だったが、まさに音楽する喜びに満ち溢れた指揮ぶりだった。

もしかしたら、これこそが山響が彼をミュージック・パートナーに迎え入れた理由の一つだったのかもしれない。音楽演奏のあるべき方向、原点に立ってくれる指揮者。
山響がローカルのプロオーケストラとして、地元に根ざしつつ、そこから大きく発信していく使命を体現していくのに必要なパートナー音楽家ということなのだろう。


その山響の奏者たちは、公演のタイトル「さくらんぼコンサート」のとおり、各々がさくらんぼのバッジ(ブローチ)を衣装の胸などに付け、山形をさりげなくアピールしながら、演奏は気合いを込めた熱演。

一方、会場のロビーでは、ここぞとばかりに物産展を展開。配布されたプログラムを使って抽選を行い、当選者は県産さくらんぼをプレゼントというサービス。
開演前のトークショーには、バボラーク自身もハッピを着て登場し、「山形にお越しください」と大宣伝。終演後は来場者すべてに小さなおみやげを配布。

いいんじゃないでしょうか(笑)。
私もまた温泉、行きたくなった。米沢牛リベンジもしたいしな。