2023年1月28日 NHK交響楽団 高崎芸術劇場
指揮 トゥガン・ソヒエフ
アミハイ・グロス(ヴィオラ)
バルトーク ヴィオラ協奏曲
ラヴェル ダフニスとクロエ第1組曲、第2組曲
ドビュッシー 交響詩 海
N響主催のB定期公演と同じプログラムで、元々はサントリーホールに行くつもりだったが、ちょっと趣を変えて、群馬の高崎に行ってみようと思い付いた。2019年に開館したこのホール、まだ一度も訪れたことが無かったのだ。
私は埼玉の民。高崎という土地に対し、それほどの遠方距離感を抱いていない。それどころか、新幹線を利用すれば、大宮からたったの30分である。
今回はフランス物をメインとしたプログラム。
ソヒエフがN響を振った公演で私がこれまでに聴いてきたのは、比較的ロシア物が多かった。だが、彼がトゥールーズ・キャピタル管を率いて、フランスでの基盤を築いていたことは周知の事実。先週のA定期公演のチャイコも実に素晴らしかったし、期待に溢れた演奏会だ。
まず、アミハイ・グロス。イスラエル出身のベルリン・フィルのヴィオラ首席奏者。
ベルリン・フィルの首席連中というのは、どいつもこいつも皆ソリスト級に上手いが、グロスもしかり。いやー、すごい。
音が大きくて鋭く、それでいて明るい。一音一音がしっかりと鳴り、曇った音色が見当たらない。なんだか「縁の下の力持ちで、どちらかというと地味」というヴィオラのイメージが覆るかのような華やかさである。もうとにかく「流石!」としか言いようがない。
そして、お待ちかねのラヴェルとドビュッシー。
こっ、これは・・・
期待はしていたが、その期待を遥かに凌ぐ超絶的な演奏で、ひっくり返った。
こうしたフランス物では、とかく音を繊細かつ精巧に作り上げ、淡い色彩感と変幻さを浮かび上がらせるアプローチが多い。
だが、ソヒエフは、果敢に響きの厚みを構築させ、エネルギーの爆発と、花火のような、あるいは黄金のような華麗さを演奏に落とし込んだ。それでいて、決して重くならない。なんという絶妙なさじ加減。
いったい、どのようにしてN響からこのような鮮やかなゴージャスさを引き出したのだろうか。
ソヒエフはリハでいったいどんな工夫を凝らしているのだろう。
N響の方、どなたか教えて下さい。
最後に、終演後のロビーで、地元民と思われる二人の中年男性の会話が聞こえてきたので、紹介しよう。
「いやー、N響、上手いねえ。やっぱ群響と違うねえ!」
(くっくっく。それを言っちゃぁあかんけどね。N響の演奏の中でも、今回のは飛び抜けてたしさ。)
「なんか、N響の各パートのトップ奏者って、みんな国際コンクールとかで入賞しているらしいよ。」
「そりゃー、やっぱ上手いわけだよな。」
(いやいやいや WWWWWWW)