クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2023/5/19 フランチェスカ・ダ・リミニ

2023年5月19日   ベルリン・ドイツ・オペラ
ザンドナーイ  フランチェスカ・ダ・リミニ
指揮  イヴァン・レプシッチ
演出  クリストフ・ロイ
サラ・ヤクビアク(フランチェスカ)、ジョナサン・テテルマン(パオロ)、イヴァン・インヴェラルディ(ジョヴァンニ)、チャールズ・ウォークマン(マラテスティーノ)、サミュエル・デイル・ジョンソン(オスターシオ)、レクシー・フットン(サマリターナ)    他


ザンドナーイの「フランチェスカ・ダ・リミニ」、初鑑賞。ついに、ようやく、観ることが出来た。

なかなか上演されない秘蔵の名曲である。2020年にA・バッティストーニが東京フィル定期公演でこの作品を採り上げようとしたが、コロナの影響で指揮者が来日できず、曲目も変更になってしまった。日本で聴けるはずだったこの貴重な機会が喪失してしまったのは、非常に残念だった。熱心なオペラファンの方々も、私と同様に嘆いたことだろう。
自分の場合、「いざとなれば、海外に行って聴けばいいさ」という手段を持っているにもかかわらず、この作品の鑑賞は今までチャンスが巡ってこなかった。だから今回はついに念願が叶った形だ。

実は、カンパニーであるここベルリン・ドイツ・オペラにとっても、本上演は「ついに、ようやく」なのであった。

このプロダクションのプレミエは2021年3月だった。せっかく新制作したというのに、なんとコロナの真っ最中。劇場はやむを得ず、無観客のストリーム配信という形で幕を開けた。
(この時の映像はその後DVDやブルーレイのメディアにもなり、市販されている。)
そして、観客を入れての公演がここでようやく実現。そのまさに初日が、なんと本日だったのだ。

今回の上演では、プレミエ時から指揮者こそ変わったが(プレミエの担当はカルロ・リッツィ)、主要キャストはほぼそのまま。歌手たちも、きっと感慨深いものがあったに違いない。舞台人であるオペラ歌手にとって、無観客で歌うほど寂しいものはないだろうから。


その出演者たちの出来が、やはりというか、歌唱演技共に見事、秀逸だ。
伝統的なイタリアオペラでは、演技そっちのけで棒立ちで歌う歌手も見受けられるが、そこらへんはさすがに上演国ドイツ。演出家ロイが緻密な演技を施していて、抜け目がない。
主役のヤクビアクが、不遇な政略結婚を強いられた悔恨を歌でしっかりと表現していて、鬼気迫る。
また、フランチェスカを取り囲む3人の男性歌手陣も、個性的な役柄に沿い、好演。
特に、ジョヴァンニを歌ったインヴェラルディは、この役に必要な激烈パワーを遺憾なく発揮した。聴衆は彼の力強い歌声に息を呑んだと思う。


演出について。
衣装など現代的ではあるが、単なる物語や舞台設定の読替えではなく、情景や、登場人物の感情、心理を丁寧に描いていく手法は、演出家ロイのまさに真骨頂と言えるだろう。

特徴的だったのは、多人数の合唱陣を舞台裏で歌わせていたこと。
おそらくこれ、初演時のやむを得ないコロナ対策として施した妥協の産物だったのでは、と推測する。
ところが、そのおかげで、舞台上に烏合の衆がいなくなり、マラテスタ家の登場人物にスポットが当たって、逆に効果が増した印象だ。そこらへんは、さすがはロイ、うまく逆手に取った。


聴衆を入れてのプレミエ初日ということで、お客さんはたくさん入るかなと思いきや、入りはまあまあ程度。
作品のマイナー性の問題なのか、コロナから完全回復できていないからなのか、それともベルリン・ドイツ・オペラというそもそものカンパニーの人気の問題なのか・・・。

面白いのは、1階席平土間などチケット代が高いカテゴリー席の方が比較的埋まり、3階席など安いカテゴリー席に空席が目立つこと。安い席から売れていく日本とは異なる現象。
そこらへんは、なんだかんだ言っても、本場欧州でオペラを鑑賞し舞台芸術を支えているのは富裕層、ということなのだろうか・・・。