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2023/4/11 後宮からの誘拐

2023年4月11日  バイエルン州立歌劇場
モーツァルト  後宮からの誘拐
指揮  ギエドレ・シュレキーテ
演出  マルティン・ダンカン
ナデツダ・パヴローヴァ(コンスタンツェ)、カロリーネ・ヴェッテグレン(ブロンデ)、アラスダイール・ケント(ベルモンテ)、ヨナス・ハッカー(ペドリッロ)、パトリック・ギュエッティ(オスミン)   他


バイエルンの「後宮」といえば、ベーム指揮、エヴァーディング演出、グルベローヴァやF・アライサが出演した1980年のお宝ライブ映像がある。
そのイメージが強いせいか、このオペラの初演はてっきりミュンヘンと勝手に思い込んでいて、「ここで『後宮』を聴くのも粋だよなー」なんて思っていたら、全然違った。よく調べてみたらウィーンのブルク劇場であった。
今回のプロダクションは、そのエヴァーディング版ではなくリニューアルされたもの。40年も経っているのだから、そりゃまあ当然だ。

肝心のキャストは、指揮者は知っているが、あとは誰も知らない。
若手中心に選んだのだろうか。育成を兼ねた上演なのだろうか。それともコスト削減?
天下のバイエルンといえど、すべての上演目に知名度抜群のギャラ高い一流歌手を揃えることは難しい。そこらへん、上手に予算を調整しているみたいな感じだろうか。

バイエルン州立歌劇場というのは驚異の観客動員率を誇っていて、間違いなく世界でもトップクラス。コロナ以前は、確か98%と発表されていたと記憶する。なんじゃそりゃ。すっげー。
ところがこの劇場も案の定というか、コロナにやられた。回復基調にあるはずだが、それでも上記の数字には戻っていない模様。

この劇場のお客さん、御高齢の方が多いからなあ。
御高齢の方は感染恐怖があるから、人がたくさん集まる場所を敬遠するもんなー。

今回の後宮、こうしたスターキャストの不在とコロナの影響が重なったのか、チケットは超余裕で、安くてなおかつ視界的にも問題ない良席チケットが買えた。さすがに当日の客席を見渡すとそれなりには埋まっていたが、空席は確実に目に付いた。何度もこの劇場に足を運んでいるが、珍しい光景であった。


本公演で私が唯一知っていたキャスト、指揮者のシュレキーテ。リトアニア出身の女性指揮者。
同国出身の女性指揮者といえば、バーミンガム市響の首席だったミルガ・グラジニーテ・ティーラが世界的に有望株として注目されている。シュレキーテも彼女に続けとばかりに、羽ばたこうとしている若手の一人と言えよう。

そのタクトは弧が大きくて機敏。緩急起伏も付いて、モーツァルトらしい溌剌さに溢れている。

そう言えば、彼女は2021年9月に来日しているが、この時もモーツァルトだった。(二期会の「魔笛」)。今年9月には読響を振るため、再度の来日が予定されている。


演出については、空飛ぶ絨毯ならぬ空飛ぶソファを4、5台並べ、宙吊りにさせて、ワイヤーで横滑りに動かしながら、歌手たちはそのソファの上に乗っかりながら歌い演じる、というもの。
最初はその斬新かつ動きのある舞台に目が釘付けになったが、ワンパターンなので、だんだんと飽きてしまった。

また、原典の脚本にはない狂言回しの一人の女性が舞台に登場し、語り(ドイツ語)とともに物語を進行させていく。
元々この作品はジングシュピールでセリフが使われるし、太守セリムはセリフのみの役者が演じるわけだが、こうした一切のセリフをこの女性がすべて担った。
これにより、歌手は歌唱のみに専念、またセリム役も黙役となったのが、大きな特徴だ。