クラシック、オペラの粋を極める!

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2023/4/5 ワルキューレ

2023年4月5日  ベルリン州立歌劇場(フェストターゲ2023)
ワーグナー  楽劇ニーベルングの指環より 「ワルキューレ
指揮  トーマス・グッガイス
演出  ディミートリ・チェルニャコフ
ロバート・ワトソン(ジークムント)、ミカ・カレス(フンディング)、ミヒャエル・フォレ(ヴォータン)、ヴィダ・ミクネヴィチューテ(ジークリンデ)、アニヤ・カンペ(ブリュンヒルデ)、クラウディア・マーンケ(フリッカ)    他


指揮者グッガイスの切れ味鋭いタクトと、シュターツカペレ・ベルリンのスケールの大きい演奏が、ラインゴールドから一段ギアを上げ、勢いを増してきている印象だ。まるで、台風が日本に接近するにつれて徐々に勢力を増強させていく、みたいな。

特に、グッガイスの堂々たる統率力には目を瞠る。既に昨年10月のプレミエの際に一サイクルを担当して指揮しているだけあり、自信満々の躍動感溢れる勇姿が映えて、まさに若き英雄そのもの。
観客もこのプリンスに大いに魅了されている。指揮者に対する拍手とブラヴォーは、明らかにラインゴールドの時よりも盛大になっている。

本来、バレンボイムのための「リング」新制作だっただけに、巨匠の病気と降板はスターツオーパーにとって痛手のはずだった。

だが、そのおかげと言ってはなんだが、こうしてニュー・ヒーローが誕生した。今、我々が目の前で見つめているのは、劇場叩き上げによる未来のマエストロ候補生だ。

ならば、現在のカペルマイスター職から昇格させ、全権委任して彼に将来を託してもよかったと思うが、そのグッガイスは既にフランクフルト歌劇場と契約済。今シーズンをもって旅立っていく。シュターオーパーは終身の栄誉を捧げたバレンボイムを慮った結果、せっかく育て上げた最適な後継者を押さえるタイミングを失してしまったのかもしれない。


歌手陣も、錚々たるワーグナー歌いが集い、音楽を強力に牽引している。
M・フォレとA・カンペの二人は、既に最高級歌手の地位を不動の物としているので、定評どおり圧巻の出来栄えであっても、彼らがこれくらい歌えることは先刻承知、驚きはない。

むしろ新鮮な魅力に惹きつけられたのが、ジークリンデを歌ったミクネヴィチューテだ。初めて聴いたが、素晴らしかった。タイプは違うが、発声の鋭さ、音が飛んでくるスピード感などは、往年のワルトラウト・マイヤーを彷彿とさせる。私が初めてマイヤーがジークリンデを歌った時の衝撃に似ているのだ。
世界的な知名度を誇っている歌手ではないと思うが、こういう歌手がしっかりといるんだよね、本場には。

ジークムントのワトソンも初めて聴いたが、横で歌うミクネヴィチューテがビンビンと声を飛ばすため、少々、というか、かなり旗色が悪い。残念でした。


チェルニャコフの演出については、もう少し、次の「ジークフリート」くらいまで様子を見てみよう。もっとも、ここまででも既に十分ちゃぶ台ひっくり返し、散らかしていて、やれやれだが・・・。