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2019/12/7 サムソンとデリラ

2019年12月7日   ベルリン州立歌劇場
サン・サーンス   サムソンとデリラ
指揮  トーマス・グッガイス
演出  ダミアン・ジフロン
エリーナ・ガランチャ(デリラ)、ブランドン・ヨヴァノヴィッチ(サムソン)、ミヒャエル・フォレ(ダゴンの大司祭)、クワンチュル・ユン(アビメレク)、ヴォルフガング・シェーネ(老ヘブライ人)   他


その昔、「ガランチャ、デリラ歌わないかなー。絶対イケると思うけどなー。」と密かに思っていた。
数年前、ついに彼女がその役に挑むというニュースを聞いた時、「そうか。じゃ、行かなくっちゃ、だな」と思った。
思うのは簡単である。だが、いざ実現となると、タイミングという問題が浮上する。仕事をしている身としては、そこが辛いところだ。

今回、そのチャンスが訪れた。逃すべからず、だ。

実はその「タイミングの問題」が、プランニング上でちょっとしたいたずらを仕掛けてきた。
今回のベルリン州立歌劇場「サムソンとデリラ」、計7回の上演シリーズ。劇場にとって重要な新演出演目なので、指揮は当然首席のバレンボイムが担う。
ところが、先約か何かのスケジュールが入っていたのだろうか、そのうちの2回だけ予め降板し、他の指揮者にその任務が委ねられた。

運悪く、その日が鑑賞日だった。

だが、私は気に留めない。だから何だ。
そりゃもちろんバレンボイムがいいに決まってる。
でもバレンボイムじゃないからといって、諦めることはしないし、萎えることもがっかりすることもない。
目的はガランチャ。他の歌手だって、錚々たる顔ぶれが揃った。だから、ベルリンに行く。

そのガランチャのデリラ。
美貌で男を惑わし、そして落とす、というこのデリラ役は、美人である彼女にとって、うってつけなはずだった。やろうと思えば、妖艶な身振りで観客の目を釘付けにすることも可能だっただろう。

だが、彼女のデリラは、とことんインテリジェントだった。

演出家の考えや意見が反映された、その結果でもあっただろう。
それでも、彼女のデリラは、見た目ではなく中身の魅力を漂わせるものだった。

それはつまり、愛と官能を歌によって徹底的に表現する、ガランチャの歌手としての実力であり、プライドではなかったか、と思う。

なにも腰をくねくねしなくても、観客は彼女のデリラにハッとし、息を呑む。それは一重にも二重にも、ガランチャの歌唱が素晴らしいからだ。

サムソン役のヨヴァノヴィッチ。期待を上回る熱演だった。
これまでにも何度か彼を聴いているが、どこか垢抜けない感じだった。今回、一皮むけた感じがした。時々一本調子になることがあるが、ご愛嬌だ。だって、ガランチャのデリラにやられちゃうんだからな。

今回の公演、上にも書いたが、他の出演者も豪華。プレミエに相応しい。ダゴンの大司祭役フォレも、アビメリク役のユンも、声に威力があって、存在感抜群だった。

指揮者のグッガイス。裏指揮者などと侮ってはならない。バレンボイムじゃないし・・などとぬかす奴には、「おまえ、聴いたのか?」と問いたい。
タクトは鋭敏で切れ味鮮やか。オーケストラを堂々とリードするその姿は、若きカペルマイスターといった風格が漂う。そのうち目が出るだろう。彼の名前を、私はしかと覚えておく。

演出について。
幕が開いた瞬間、物語にあまりにも忠実なコテコテの写実的舞台装置が現れて、びっくり。メトほど豪華ではないが、シカゴとかサンフランシスコとか、保守的演出が未だに蔓延るアメリカの舞台じゃないかと見紛う。こんな古臭い演出が、レジーテアターの先端を行くドイツのベルリンで繰り広げられるなんて、信じられない。

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まあでも、それならそれでいい。ある意味、潔い。それを素直に認めよう。
ならば、ラストの神殿崩壊シーンは見ものだ。思い切りスペクタクルにやってもらおうじゃないか。

と期待していたら・・・。
第三幕開始の前に、劇場支配人らしき人が登場。ドイツ語で何かを語り、もちろん理解できなかったが、話の中の「コンチェルタンテ」という単語を逃さず聞き取った。
どうやら舞台装置が故障した模様。合唱を含む出演者の動きが取れないため、急遽やむを得ずコンチェルタンテのような棒立ち演奏を行ったのであった。(ただし、衣装を身に付け、最低限の身振りを行う。)

なんとまあ・・・。
「音楽を聴く」というオペラの原則に立ち返るのであれば、別に問題もなく、不満もないけどね。
でもさ、ベルリン州立歌劇場って、長い時間をかけて改修工事施したんでしょ??
舞台機構だって、最新技術を採り入れたんでしょ??
そういうところが、なんつうか、アレなんだよな。

前回の「死の都」鑑賞記事で、「ライブは何が起こるか分からない」と書いた。
まさか2日連続で、その言葉を噛みしめることになろうとは・・・。