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2023/4/4 ラインの黄金

2023年4月4日  ベルリン州立歌劇場(フェストターゲ2023)
ワーグナー  楽劇ニーベルングの指環より 「ラインの黄金
指揮  トーマス・グッガイス
演出  ディミートリ・チェルニャコフ
ミヒャエル・フォレ(ヴォータン)、ロランド・ヴィリャゾン(ローゲ)、ヨッヘン・シュメッケンベッヒャー(アルベリヒ)、シュテファン・リュガマー(ミーメ)、ペーター・ローゼ(ファフナー)、ミカ・カレス(ファーゾルト)、アネット・フリッチュ(フライア)、クラウディア・マーンケ(フリッカ)    他


シュターツ・オーパーが毎年この時期に開催するイースター・フェスティバル「フェストターゲ」。
今年の目玉は、本来ならこのフェスティバルを創設したD・バレンボイムが振る「ニーベルングの指環」チクルス上演と、その合間に演奏されるシュターツカペレ・ベルリンのコンサートのはずだった。
しかし、周知のとおり、肝心のバレンボイムが病気により音楽総監督のポストを辞し、一連の公演の指揮をすべて降板してしまった。

当の本人からしたら、本当に残念無念、キャンセルは忸怩たる決断だったと思う。
今回のリングは、バレンボイムの80歳を記念して製作されたとのもっぱらの話だ。実現していたら、本人もさぞや誇らしかったことだろう。

私自身も残念だ。チケットは一年前に購入済だった。まさかこんなことになろうとは・・。
新リングのプレミエは昨年10月。合計3回の上演チクルスが敢行されたが、バレンボイムの代わりにC・ティーレマンがそのうちの2回を、T・グッガイスが残りの1回を任された。

こうした経緯があったので、私もある程度、諦めの覚悟は出来ていた。
しかし、そう言いつつ、心の中で密かに「奇跡の回復、まさかの電撃復帰、ないかなあ・・。あってほしいなあ・・。」と願っていた。
最終的には願いは叶わなかったが、冷静に考えれば、4夜で16時間を超える演目を、病気中の80歳の爺さんに指揮させるなど、正気の沙汰ではないのである。

代わりに指揮を務めたグッガイス。
シュターツ・オーパーの若きカペルマイスターで、バレンボイムの最後の愛弟子。だから、この代役変更は至極順当で、納得がいく。
日本ではまだ無名だと思うが、私は3年前、ここシュターツ・オーパーで、彼が振ったサン・サーンス「サムソンとデリラ」を鑑賞している。
切れ味鋭いタクトで、鮮やかに音楽を作っていた。この時私は、類まれな才能を確かに感じ取った。おそらく彼には、この先、前途洋々のキャリアが待っている。事実、2023年の新シーズンから、S・ヴァイグレの後釜として、フランクフルト歌劇場の音楽総監督に就任することが決まっている。
だから今回のリングも、「バレンボイムじゃなくてがっかり」ではなく、未来のオペラ界をリードするであろう若武者に夢を馳せながら、残りの3つも含めてしっかりと鑑賞することとする。

実際、カーテンコールにおいても指揮者に対するブラヴォーはかなり飛んでいた。分かる人は分かってるんだと思う、きっと。


演出は、現代演出の最先端、急先鋒を行くチェルニャコフ。大胆かつ過激、難解な解釈と手法で毎度観客を挑発するお騒がせ男。観る側としては相当の覚悟が必要だが、だからといって目を背けていては何も伝わってこない。
まず強烈な主張を浴びる。その結果として、刺激を受け、何を感じるのか、何が生まれるのか、神経を研ぎ澄ませながら探っていきたい。これは演出家と自分の一対一勝負だ。

ただし、演出の中身については、もうちょっと様子を見てみよう。まだ四部作のうちの一作目。語るには尚早ということで。


歌手について、
リングは出演者が多いので、いちいち全ての人の評価や様子をコメントすることは出来ないが、何人かについて言及していこう。

ファフナーのP・ローゼ。
おいおい、前日ドレスデンでオックス男爵歌ったばかりじゃんかよ。オレと一緒にドレスデンから移動してきて、連日のステージか? すげーな。
しかも、ファフナー役、貫禄がハンパない。

ローゲのヴィリャゾン。
「ヴィリャゾンがローゲかよ・・・」と思った人も少なくないはず。私もそのうちの一人。
うーん、なんだかな~・・。
演技は巧みだが、歌い方もドイツ語も妙に違和感。ワーグナーっぽくない。
案の定カーテンコールでは、ただ一人盛大にブーイング食らってた。でもヴィリャゾン、怯むことなく堂々と勝ち誇るかのように答礼していた。肝が据わっている。大したもんだ。

アルベリヒのシュメッケンベッヒャーは、どうやら数日前に交代した模様。元々はヨハネス・マルティン・クレンツレが発表されていた。
演技とか、色々大変だったと思う。カーテンコールで、真っ先にプロンプターボックスに駆け寄り、プロンプターさんと握手していた。