クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

バレンボイム

バレンボイムベルリン州立歌劇場のGMD(音楽総監督)の職を辞するという発表が報じられた。年末年始にベルリン・シュターツカペレと第九を演奏し、また、つい先日のベルリン・フィル公演でも指揮を担い、協奏曲のソロを務めたアルゲリッチとはアンコールでデュオ曲を披露するなど、復活の兆しを見せていた。「お! これはもしかして良い傾向か!?」と思っていた矢先だっただけに、少々残念なニュースである。私は奇跡の復活を期待し、それを信じていたからだ。

もっとも、完全引退を発表したわけではない。辞任したのは歌劇場の音楽監督だけで、シュターツカペレ・ベルリンとの結び付きは、本人的にはどうやら継続したい意向だとされる。

歌劇場の音楽監督とは、それだけハードな仕事なのだろう。
上演演目の制作に責任を持ち、歌手を選んでリハを行い、舞台と音楽のバランスを調整するため演出家と協議し、長時間ピットに籠もって演奏を支える。自分が振らない公演でも、演目や指揮者の決定に責任を持つ。
何だかいかにも大変そうだよな。


私自身にとって、バレンボイム&シュターツオーパーは、特にワーグナー上演において理想郷と呼べるものだった。まだバイロイト詣でが叶わぬ遠き夢だった頃。そんな時でも、私には「ベルリン」という目指すべき場所が見つかっていた。そこに行けば、最高のワーグナーが保証されていた。
特に「パルジファル」は、バレンボイムこそ、この作品について開眼させてくれた我が師である。
日本でもコンサート形式上演で演奏してくれたが、私は現地で本格舞台上演を三度鑑賞した。その貴重な体験は、間違いなく生涯における千載一遇の幸運だったと言えるだろう。


シュターツオーパーにとっては大きな痛手に違いない。バレンボイムは看板だった。劇場のレベル、知名度を飛躍的に高めた彼の貢献、功績は計り知れない。

一方で、もしかしたらそれほど心配をする必要もないのかもしれない。
シュターツオーパーなら、きっと有能な後任指揮者を見つけてくることだろう。それだけの格を装備する一流劇場だ。

むしろ心配なのは、存在自体が完全にバレンボイムに依存しているウェスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラかもしれない。一人の絶対的カリスマの名の下に集結している団体だけに、カリスマを失った瞬間、存続が危ぶまれることになりかねない。
アーノンクールが率いていたウィーン・コンツェントゥス・ムジクスのように・・・。

日本だって他人事、対岸の火事ではないぞ。小澤征爾の名を冠したフェスティバルこそ、明日は我が身だ。
近い将来のこと、ちゃんと考えているのだろうか。
「そんなこと、考えたくもない」が、さしあたっての本音じゃねえの??