クラシック、オペラの粋を極める!

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バレンボイムの代役はティーレマン

病気療養のため、当分の間音楽活動を休止すると宣言したバレンボイム
日本のクラシックファンにとっては、さしずめ12月に予定されているシュターツカペレ・ベルリンとの来日公演がいったいどうなるのかが最大の関心事であったが、このたびC・ティーレマンが代理を引き受けて指揮することが主催者から正式に発表された。

うーーん、なるほどそうきたか・・・。

私はてっきり公演そのものが中止になると思っていた。

これは、ただのシュターツカペレ・ベルリンのコンサートではない。
バレンボイムが振る”シュターツカペレ・ベルリンのコンサートである。指揮者バレンボイムこそが公演の目玉であり、聴衆は彼の出演に対して高い金を払う。
指揮者というのは、いわばオーケストラの顔だ。誰が振るかによって、チケットの値段も変わってくるし、売れ行きも変わってくる。「誰だっていい」ということは決してないわけである。

ましてやバレンボイムは、今や指揮者界の中でも大御所中の大御所。彼の代わりを堂々と務められる指揮者は、世界中を探しても2、3人しかいない。そこらにいる指揮者では、高い金を払ったお客は絶対に納得しないだろう。

ところが、今回、その2、3人のうちの一人が代わりを務めることになったのだから、これはもう唸るしかない。

もちろん、中には「ティーレマンになってがっかり」というアンチもいるだろう。ファン側には好みというのがあり、「聴きたい」「聴きたくない」という思いを勝手気ままに抱く権利がある。当然のことだ。
だが、実際問題として、他にバレンボイムの代わりを務められる人がいないのは厳然たる事実。そこはもう受け止めるしか無い。むしろ、「よくティーレマンを確保できたな」と素直に評価すべきではなかろうか。

ティーレマンは、12月の来日公演だけでなく、今月、ベルリン州立歌劇場の「新リング」プレミエ上演も代役を引き受けた。バレンボイムが直々に依頼したという噂も聞く。
そうなってくると、いよいよベルリン州立歌劇場とSKBのポストもバレンボイムから禅譲されるのではないかという憶測がにわかに湧き上がってくる。ティーレマンにとって、ベルリンは出身地でもあるし、ドレスデンの契約も終わるし、決して悪い話ではないと思うが・・・こればかりは政治的な面もあり、双方の駆け引きもあるだろうし、一寸先は闇だ。


いや、その前に、まずはバレンボイムの健康状況の回復を祈ろう。
先日、ちょうどNHK-BSのプレミアムシアターでバレンボイムの特集が組まれ、病に倒れた後に復帰した今年8月のザルツブルク音楽祭公演(ウェスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラ)のライブ収録が放映されたが、やはりバレンボイムは相当に弱々しかった。
辛うじて立って指揮していたし、必要最低限のタクトを振っていたが、音楽を自在かつ縦横無尽に操るには程遠かった。かつての勇猛果敢な指揮ぶりを知っているだけに、余計に衰えが目立った。

病というのはかくも残酷だが、それでも医学の力と、本人の頑張りと、神様の思し召しによって、これを克服することも出来る。
それまで「いったいそのパワーはどこから生まれてくるのか」と驚嘆するくらい元気に活躍していたバレンボイム。音楽だけでなく、世界平和にも少なからずの貢献を果たした氏に対し、神様がささやかな奇跡を授けたとしても、何の不思議もない。