ロンドン交響楽団 サントリーホール
指揮 サー・サイモン・ラトル
2022年10月5日
シベリウス 交響詩「大洋の女神」、交響詩「タピオラ」
ブルックナー 交響曲第7番
2022年10月6日
ベルリオーズ 海賊序曲
武満徹 ファンタズマ・カントスⅡ
ラヴェル ラ・ヴァルス
シベリウス 交響曲第7番
バルトーク 「中国の不思議な役人」組曲
アムステルダムにある世界有数のコンサートホール、コンセルトヘボウ。
私が初めてこのホールでコンサートを聴いたのは、1996年9月。この時聴いたのが、ここを本拠として活動するコンセルトヘボウ管ではなく、ラトル指揮によるバーミンガム市響だった。つまり、外来公演ということになる。
で、この時のメインプロがブルックナー交響曲第7番だった。
今でも強く印象に残っているのが、この時のブル7の超絶的な美しさである。
ブルックナーの演奏では、概して巨大なフォルムの構築に注目してしまいがちだが、ラトルはピアニッシモを徹底的に磨き上げ、繊細さを極めて、天国的なハーモニーを創出していた。
あまりにも美しく、感動したので、その後に発売された同オケと録音したブル7CDを衝動買いしてしまったほどだ。
ところが、これを聴いてみたら、生で聴いた印象と随分異なっていたため、1回聴いただけでポイしてしまったが・・。
もしかしたら、あの美しさは、コンセルトヘボウの極上の音響の賜物だったということなのだろうか・・。
あれから四半世紀以上経ち、ラトルのブル7を再び聴く機会が到来した。
ラトルはやってくれた。あの超絶的に美しいブル7がここ東京で見事に甦った。
年月経過によって作品解釈が変わってもおかしくないだろうし、オケもホールも違う。もちろん私の記憶だって経年劣化し、詳細の部分はかなり曖昧だ。
だが、基本コンセプトは多分同じ。それが何よりも嬉しかった。
翌日は、一転してバラエティに富み、見本市のような、ドラえもんのポケットから様々な道具が出てくるかのような、夢のプログラム。
それはあたかも「どんな作品でもお手の物」と言わんばかり、ロンドン響の実力、レパートリーの広さを誇示しているかのようだった。
ここでのラトルは、いちいち作品の本質、あるいは作曲家の真意に迫ろうとするアプローチを取らない。オーケストラ配置を前日とガラリと変えながら、「こういう見方がある」、「こういうやり方も考えられる」を単純に次から次へと繰り出していく。
そして、微笑みながら聴衆にこう語りかけているのだ。
「このオーケストラはすごいんだよ。何でも出来ちゃうんだよ。ほら、ね!」
私は2公演しか行けなかったが、他にエルガーがメインのプロも含め、全国を駆け巡り、各地でコロナによる閉塞状況を打破してくれたロンドン響。相変わらず「ブラヴォー」コールは鳴り響かず、ブルックナー演奏後ではフライング拍手も起こって残念な一幕もあったが、それでもコンサートホールに再び活況が戻る呼び水になってくれたのではあるまいか。
きっと夜明けは近い。ありがとう、ラトル&ロンドン響。