2021年9月19日 東京フィルハーモニー交響楽団 オーチャードホール
指揮 チョン・ミョンフン
ブラームス 交響曲第3番、第4番
7月に1番2番を聴いた時もそうだったが、指揮者とオーケストラの結び付きの強固さ、相互信頼の深さを目の当たりにし、聴いていて熱い物が込み上げてくる。「この指揮者にどこまでも付いて行く」、もっとオーバーに言えば「この指揮者のためなら死ねる」とでも決意しているかのような東京フィルの献身的な演奏姿勢は、単なるあっぱれを越えて、感動的でさえある。
チョンはこのような結び付きを「ファミリー」と称しているようだが、私にはその献身さをもたらした絆が何となく理解できる。
家族というのは、普段は何気なく、当たり前の存在なんだろうと思う。
ところが、離れ離れになったり、誰かが病気になったりした時、初めてかけがえのない大切な存在であることに気付く。
東京フィルは、コロナのパンデミックによって、演奏することが当たり前でなくなる事態に直面し、絶大な信頼を置いていたチョン・ミョンフンも来日中止に追い込まれた。
20年にわたって築き上げてきた良好な関係が閉ざされそうになった時、オーケストラは心の底からチョン・ミョンフンとの再会を望んだ。
きっと、そういうことなのだと思う。
演奏は、3番も4番も、燃焼度が高かった。
普段は高いところにいるプロの奏者たちが、こんなにも渾身の力で魂の演奏を聴かせるのを久々に聴いた。東京フィルは、完全に指揮者と一体化していた。
おそらくチョン・ミョンフンは、目を瞑り、イメージし、腕を振った時、そのイメージどおりの音を手にしていたのではないか。
もしそうだったのなら、これはオーケストラ演奏の理想郷である。彼らは、もしかしたらそこに到達してしまったのではあるまいか。
ならば、私は望む。強く要望する。
2月公演で中止になってしまったマーラーの「復活」を、是非やってほしい。
今の両者なら、とてつもない空前絶後の名演が生まれてもおかしくはない。