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2021/9/22 曽根麻矢子 J.S.バッハ連続演奏会

2021年9月22日   曽根麻矢子 チェンバロリサイタル(J.S.バッハ連続演奏会Ⅱ)   Hakuju Hall
バッハ   平均律クラヴィーア曲集第1巻


Hakuju Hall(ハクジュホール)に初めて行った。創設されたのが2003年とのことなので、18年も経ってようやくである。まあ要するに、普段あまり室内楽のコンサートに行ってないというわけだ。

いざ行ってみると、ホールはオフィスビルの7階にあって、エレベーターで上がっていくというのが、なんだか味気ない。「さあこれからコンサートだ! 音楽聴くぞ!」という高揚感が生まれない。客席数300の小ホールだし、一企業が運営管理するのだから仕方がなく、文句を言う筋合いなんてないんだけどさ。

それから、ここのホールの特色であるリクライニングシート。
優雅で贅沢な鑑賞体験というのが売りなのだと思うが、実際にこれをやられたら、後部座席の人はおそらく戸惑うだろう。飛行機のエコノミークラスで無遠慮にこれをやられると、少なからずの不快感を覚えてしまうのと同様。
実際、座席を後ろに倒して聴いている人は、少なくとも私が見渡す限りにおいて誰もいなかった。もしかしたら、特別な指定コンサート限定なのだろうか。よくわからないが。


さて、この日の目的はHakuju Hallではなく、当然のことながら曽根麻矢子さんのバッハ演奏である。
何を隠そう、曽根さんの演奏を聴くのも今回が初めてだった。だが、彼女の日ごろの活躍、チェンバロ奏者としての実力が高く評価されていることは、もちろんよく知っている。
そんな彼女が、5年をかけて10回のバッハ作品連続演奏会を敢行する。ある意味、キャリアの集大成とも位置付けられる、一大プロジェクトであろう。今年3月に行われた第1回のコンサート(ゴルトベルク変奏曲)は、行きたかったが都合がつかなかった。今回、満を持してついに足を運ぶことになった次第というわけだ。


まずは、チェンバロ特有の繊細な音色に惹かれていく。チェンバロ単独の演奏を耳にする機会に乏しいから、とにかく新鮮だ。
そうした音色の新鮮さから耳が慣れてくると、今度は徐々にバッハの音楽的なムーブメントに魅了されてくる。
曽根さんの演奏は、一曲一曲をあたかも本のページをめくるかのように、物語を読み聞かせてくれる。聴き手は、その演奏を堪能しつつ、次のページをめくったらどんな展開が待っているのか、といったワクワク感を滲ませる。
これは、ゴルトベルク変奏曲や、無伴奏ヴァイオリンパルティータのシャコンヌなどを聴いた時にも陥る、バッハ鑑賞特有の感覚だ。この感覚を曽根さん演奏のチェンバロで味わえたのは、本当に楽しかった。


演奏が終わり、一冊の本が閉じられた。
だが、聴き手の私は、子供のように、すぐにまた次の本を読み聞かせてほしいとねだる。
次は、来年3月とのこと。
あ、そう。じゃ、また行かなくてはね。
そんな思いで帰路に着いた。