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2022/3/18 東京春祭オーケストラ

2022年3月18日  東京春祭オーケストラ   東京文化会館
指揮  リッカルド・ムーティ
モーツァルト  交響曲第39番
シューベルト  交響曲第8番「未完成」、イタリア風序曲


今年もまたマエストロが東京・春・音楽祭のために来日してくれた。大変な状況のさなかであるにもかかわらず。
大変な状況のさなかであるからこそ、何としてでも来日して演奏しなければならない、という確固たる決意、並々ならぬ意思があったのだと思う。

冒頭のスピーチにもあったが、ムーティは音楽の力を信じている。若者の力を信じている。若者が紡ぐ未来とその可能性を信じている。優秀な若手奏者たちで構成された東京春祭オケを指揮し、彼が生涯をかけて掘り下げてきた音楽の源泉を彼らに伝授することは、おそらくマエストロの絶対的な使命なのだと思う。

そして、その絶対的な使命に基づいて伝えようとする音楽の真髄を、100%の集中力で受け止めようとする若手奏者たち。その真摯かつ献身的な姿は感動的でさえある。
世界を見渡して、これほど指揮者のタクトに食らいつき、指揮者の創造に応えるべく全身全霊で演奏しようとするオーケストラが、果たしてどれだけあるだろうか。
その意味において、ムーティ指揮の東京春祭オーケストラは、奇跡のオーケストラである。これはまったく過言ではない。それゆえに、名演の誕生は必然である。
昨年は、ヴェルディで奇跡の名演が生まれた。
そして、今年はシューベルト

これほどまでに優美で、精緻で、神秘的で、調和に溢れた未完成を、私はこれまでに聴いたことがない。
また、正直それほど好きな作品ではない未完成を、これほどまでに心眼を開いて聴いたこともない。
特にピアニッシモの天国的な美しさは、あたかも時間が静止し、息までも止まるかのよう。

この慈しみに包まれた音楽を、紛争地に届けられないものか。犠牲者の魂に捧げられないものか。

この日の演奏を聴いた我々は、この大きく膨らんだ感動を、今はとにかく祈りに変換しなければならない。