2021年4月22日 東京春祭オーケストラ(東京・春・音楽祭) 東京文化会館
指揮 リッカルド・ムーティ
モーツァルト 交響曲第35番 ハフナー、交響曲第41番 ジュピター
ムーティはこれまでに何度も東京・春・音楽祭のために来日し、このために特別に編成されるアカデミー・オーケストラも何度も振っている。
しかし、今年ほど比類がないほどのスペシャル感、格別感を彷彿とさせたのは無かったのではなかろうか。
それは、パンデミックで開催が危ぶまれた中、その困難を本人、関係者、演奏家たちが必死に乗り越え、実現に至らせたからだ。本公演は文字どおり特別だった。
若いオーケストラ奏者たちが真摯に楽曲に取り組む姿勢や眼差しの鋭さについては、「マクベス」公演の鑑賞記の中で指摘した。
偉大な指揮者の導きによって、奏者全員が同じ方向を向いて全精力で演奏した時、音楽は至高に到達する。この熱気は、むしろ若い演奏家たちの臨時編成のオーケストラだったからこそ獲得できた、芸術の一つの指標だったと言えるだろう。
この日のモーツァルトは、外観するとシンプルでオーソドックスなスタイルを纏っていた。
いわゆる斬新さみたいなものは見当たらない。
ていうか、「そもそもモーツァルトに斬新さを求める必要などない」とでも指揮者は語っているかのようだ。
ただし、音符には意味があり、そこだけは注意深く拾っていく。すると、シンプルさの中にちょっとした表情や仕草が加わってくる。
たぶん「モーツァルトの演奏はそれだけで十分だ」というのが、マエストロの解釈なのだろう。
ところで、興味深いことだが、ムーティが日本でモーツァルトの「ハフナー」を披露するのは、(見落としがなければであるが)これが3度目である。(私は更にミラノで行われたスカラ・フィルの演奏会でも聴いている。)
そして、なんと、今秋に予定されているウィーン・フィルの来日公演プログラムにも、この曲が入っている。
マエストロはこの曲が好きなのだろうか?