クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2021/8/23 読響

2021年8月23日   読売日本交響楽団   サントリーホール
指揮  セバスティアン・ヴァイグレ
イサン・エンダース(チェロ)
カバレフスキー  コラ・ブルニョン序曲
ショスタコーヴィチ  チェロ協奏曲第2番、 交響曲第5番


今年に入って3度目のヴァイグレの読響公演。
ということはつまり、ヴァイグレさんは3回も過酷な2週間待機を受け入れ、日本に来てくれたということになる。
なんという心意気! 頭が下がるし、本当に感謝しかない。

一方で、私は心配になる。
これまでは、欧米でロックダウンが施行され、劇場やホールが閉鎖になるなど演奏会開催に強い制限がかかったことから、比較的緩やかに開催が認められた日本に行くことは、それなりに意義があった。たとえ2週間待機を求められたとしても。それで仕事が得られるのだから。

だが、これからは事情が変わってくる。
欧米ではワクチン接種が進み、経済活動を本格的に再開させる方向に舵を切りつつある。先日もテレビニュースでやっていたが、ドイツでもイタリアでも、街は観光客も含め、人が溢れていた。(しかも、誰もマスクしていない!)
それが良いかどうかは別にして、劇場やホールにも徐々に人が戻ってくるだろう。

楽家たちの活動の場が蘇り、舞台が整っていく。
そうした時、彼らは、依然として入国に厳しい措置を課し続ける日本に果たして行こうと思うだろうか・・・。
なんだか取り残されていく予感・・・。悲しいことに日本は後進国なのだ。


暗澹たる気分に陥るが、とにかくこのコンサートを振り返ろう。

ショスタコーヴィチのチェロ協。
1回聴いた程度ではなかなか印象が残らない、ショスタコの中でも比較的マニアックな作品の一つだ。
だが、ソロを務めたエンダースはアプローチが明快で、難解さをスムーズに取り除き、作品の魅力を上手く引き出していた。いい演奏だ。
第1楽章途中で止まってしまったハプニングにはびっくりしたが・・。

あれはいったい何だったのだろう。何が起こったのだろう。
使用していた電子楽譜が上手く作動しなかったのだろうか・・。

近年、電子楽譜を使用する演奏家を時々見かけるようになった。機械である以上、予期せぬハプニングは起き得る。
それでも今後、徐々に浸透し、10年後くらいには主流になっていくのだろうか・・。


メインのタコ5。昨年12月のフェド翁の広響以来。
広響の演奏は、私にとって満足の行くものではなく、せっかくフェドさんを追っかけてはるばる遠征したのに、残念だった。
ヴァイグレの演奏は、この作品を聴いて沸き起こる感興のカタルシスを満たしてくれた。「そう! これ!」と、思わずニンマリ。

まず、純粋に読響が上手い。比較してはいけないし、広響には申し訳ないが、実力の差をこれでもかとばかりに見せつける。
特に弦。ショスタコの演奏に必須とされる「ガッガッガッ・・」という強烈な奏法の凄味がカッコいい。

ヴァイグレのタクトは、読響のイケイケ演奏を煽りつつ、一方で巧みにセーブしつつ、コントロールが盤石。
音楽作りにしても、ロシアのオケのような圧倒的重量感で攻めるのではなく、響きのバランス配分で勝負している感じだ。音色や曲調の変化もしっかり追求していて、まるで音楽が視覚化されるかのよう。「冴えの演奏」という表現がピッタリの名演だった。


コロナ禍における感染対策ルールで、密を避けるために終演後のお客さんの時間差退場というのがあり、指示によってしばらく待たされる。
私はこの措置が嫌いで、最近は最後まで残らず、カーテンコールの途中でおさらばしてしまうことがしばしばある。
だが、この日は最後まで拍手を送り続けた。
もちろん、ヴァイグレさんに対する感謝の念を込めてである。