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ショスタコーヴィチ 交響曲第5番

広島に遠征してフェドセーエフ指揮の広響を聴いてきたのが、10日前のこと。その後、広島ではクラスターが発生し、感染状況が悪化。Go to キャンペーンが全国に先駆けて一時停止というニュースが駆け巡った。
演奏会のタイミングとしては、ギリセーフで良かったとも言えるが、改めて行動にはくれぐれも慎重に気を付けるべきだということを認識した。

その広島で聴いたフェドセーエフショスタコーヴィチ交響曲第5番。
フェドのタコ5は、何となく以前にも聴いたことがあると思っていたが、ちゃんと調べてみたら、なんと初めてであった。これは自分でも意外というか、なかなかの驚きだった。
なぜなら、フェドセーエフくらいの名指揮者であれば、当然これまでに日本で何度も演奏してきただろうし、それくらいロシアの指揮者にとってこの曲を演奏するのは当たり前の名曲だからだ。


私がこの作品に出会ったのは、今からウン十年前の高校生の時。クラシック音楽に夢中になり、レコードを買って自分のレパートリーを広げていた頃だ。
入手したのは、レナード・バーンスタイン指揮のニューヨーク・フィルハーモックによる1979年東京ライブ録音盤。名盤との誉れ高く、当時、自分としては間違いのない選択だったと思う。

なんてカッコイイ曲、なんてカッコイイ演奏。
私はハマりましたよ、曲と演奏の両方に。
特に第4楽章。勇ましく、雄々しく、そして華やか。素早いテンポが、何とも言えず爽快。

こうして私のタコ5のスタンダードは、まずバーンスタイン盤で形成され、刷り込まれた。

そんな私に、当時、高校ブラスバンド仲間の友人クンが横槍を入れてきた。
チッチッチッ、あのな、バーンスタインなんて田舎モンの演奏だぜ。
ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルの演奏、これこそが最高だ。これこそが究極にして大本命の決定盤だ。これを聞かずしてタコ5を語るなかれ、だ。

そうなのか? 本当か? そんなにすごいのか?
さっそくムラヴィン盤を買って聴いてみた。

ひっくり返った。椅子から転げ落ちるくらいの衝撃だった。
凄まじい。と・に・か・く、凄まじい。
これがムラヴィンなのか。これが鉄のカーテンの向こう側のオケなのか。
シベリアから吹き付ける吹雪。共産主義国家の一糸乱れぬ軍隊行進。粛清の恐怖・・・。
怖いよ~、助けて~、イヤだ~。

友人クンが尋ねてきた。「どうだいすげーだろ?」
「すっっっっっっごかった。」と答えた私。ニヤリとほくそ笑む友人クン。

バーンスタインニューヨーク・フィルは1979年に東京文化会館でタコ5を演奏し、それが録音されたが、なんと、その6年前、ムラヴィン&レニングラード・フィルも1973年に、同じく東京文化会館でこの曲を演奏し、それが録音されている。
当時、この両方を生で聴いた人、いるんだろうな。なんて幸せな人だ。もうこれで死んでも本望じゃないのか?


さて。
実を言うと、何を隠そうこの私も、ショスタコーヴィチ交響曲第5番の生鑑賞で、一生の宝となる天下一品の公演に立ち会っている。

1983年10月、スヴェトラーノフ指揮によるソビエト国立交響楽団(現ロシア国立交響楽団)。

私は残念ながらムラヴィンスキーに間に合わなかった人間だが、少なくともチャイコの悲愴とショスタコの5番の生演奏に関して、スヴェトラーノフこそが究極絶品であり、あれから37年経っても、これ以上の演奏に巡り会えていない。
ていうか、これからも多分、絶対、巡り会わないだろう。