2021年4月11日 東京・春・音楽祭 東京文化会館
合唱の芸術シリーズvol.8
指揮 シュテファン・ショルテス
管弦楽 東京都交響楽団
合唱 東京オペラシンガーズ
天羽昭惠(ソプラノ)、金子美香(メゾ・ソプラノ)、西村悟(テノール)、大西宇宙(バリトン)
シューベルト 交響曲第4番 悲劇的
モーツァルト レクイエム
「ムーティが来る!」、「ムーティが来る!」
皆がにわかに色めき立って騒ぎ始めた東京・春・音楽祭。明るいニュースで沈みかけたフェスティバルの勢いが一気に持ち直したそんな最中、ひっそりと“もう一人の”外国人指揮者が来日した。
「おいおい、オレもだぞー。忘れちゃ困るんだよー。」
そうですショルテスさん、日本にようこそ!(笑)。
もちろんワタクシは貴殿のことをよーく存じ上げておりますよ、はい。
随分と昔の20年くらい前、ドイツ国内では「エッセン・アールト劇場が、なんだかいいぞ!」という評判が沸き立っていた。実際、権威あるオペラ専門誌「OPERN WELT」が最優秀劇場に選定したこともある。
その当時、音楽監督として同劇場の実力を飛躍的に高めたのがショルテスだった。私も2004年にその真価を確かめたくてエッセンを訪れ、彼が振る「ばらの騎士」を鑑賞した。
これまでに私がショルテス指揮の公演を鑑賞した5公演は全てオペラで、しかも全てR・シュトラウス作品。
そういう意味で今回のプログラムは、これまでと違うぶん、楽しみにしていた。公演が中止にならず、こうして無事に開催され、本当に何よりだ。
そのショルテスの音楽。
バランスの取り方、ニュアンスの作り方、全体の方向性の導き方、どれもが理想的にまとめられ、堅実。響きは透徹で、彫りが深い。
まさしく職人技といった趣きだ。
一方で、たった1回のコンサートにかける意気込みや熱意がもっと全面に出るかと思いきや、意外と淡々とした佇まい。
この人、タクトを振りながら、熱くなると結構唸る人なのである。
そうした情熱で、これまでに彼が振ったシュトラウス作品では、芳醇な香ばしさが感じられただけに、そういう意味でちょっと意表を突かれた感じ。
いやいや、シューベルトとかモーツァルトなんだから、そういうもんだろ、と言われれば確かにそうなわけだが・・。
まさか、熱くなると思わず唸り声を発してしまい、そうすると飛沫が飛んじゃうので、ちょっと芸風を変えてみました・・・なんてことはないよねぇ(笑)。