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2021/4/17 N響

2021年4月17日   NHK交響楽団   東京芸術劇場
指揮   鈴木雅明
吉井瑞穂(オーボエ
ハイドン   交響曲第95番
モーツァルト   オーボエ協奏曲
シューマン   交響曲第1番 春


私にとってハイドン交響曲は、代表的な100番以降と標題が付いているいくつかのもの以外は、はっきり言ってどれも皆一緒である。
大した区別もつかないし、あまり気に留めてもいない。コンサートのプログラムに入っているからといって、予習をするでもない。予習をする必要さえもないと思っている。どれも皆同じに聴こえてしまうからである。

そういうことなので、今回「95番」を聴くことになっていても、「ふーん」みたいな感じだったが、「ところで以前に聴いたことがあるのだろうか?」とちょっと気になり、マイ・データベースで調べてみた。そしたらなんと、大昔の35年前に一度聴いていることがわかった。
ショルティ指揮シカゴ響の来日公演だった。(メインはブル7)
このハイドンの演奏は当然覚えていないんだけど、なんだかちょっとノスタルジックな気分になりました(笑)。


今回のN響公演の最大の目玉は、吉井瑞穂さんソロのモーツァルトのコンチェルトである。この一曲のためにチケットを買ったと言っていい。
優秀なプレーヤーであることは重々に承知していたが、私は彼女のソロを聴いたことがなかった。

もちろん、オーケストラプレーヤーとして名を連ねた演奏は何度も聴いたことがある。マーラーチェンバー、ルツェルン祝祭。それからN響の客演も・・。
4年前、N響に賛助出演した公演(エッシェンバッハ指揮)、なんだかN響オーボエからいつもとは違う非常に美しくて麗しい音色が聞こえてきて、「ん?? オーボエめっちゃ上手いぞ? 誰だ?」とびっくりしたことがある。それが吉井さんだったというわけだ。

本場欧州のオケに在籍している実力は伊達じゃない。言うまでもなく日本人プレーヤー(このくくりは好きじゃないが)としては頭抜けているわけだが、特に、オーボエ奏者ということで特筆すべき存在だ。
というのも、昔から外来オーケストラ公演を聴いてきて、日本のオーケストラと実力の程度の差がはっきり出ているパート(楽器)があることに気付いていて、それがホルンとオーボエだからだ。

さて、今回のコンチェルト、期待どおり本当に素晴らしい演奏だった。
信じられないことだが、楽器を奏でているという感じがしないのである。「自然界から聞こえてくるようなサウンド」とでも言おうか。「心地良いそよ風が皮膚を撫でる爽快感」、あるいは「森林浴の中で感じる木々の香り」などと形容すればいいのだろうか。

ソロを支えるN響の伴奏も、とことん優しい。
ていうか、オケ奏者の方々は、たぶん「支えている」、「伴奏している」という意識はなかったのではあるまいか。
彼女の演奏を肌で感じれば、自分たちの演奏の音も自然とそこに寄り添っていく。
そうしていれば、それだけに集中しさえすれば、自ずとアンサンブルが整い、絶妙のサウンドが構築されるというわけだ。


ブログ記事としては、こうしてコンチェルトのことだけを記し、メインの演奏のことを省略して終わりにしてもよかった。ていうか、そうなるのではないか、と予め想像していた。
ところが、予想以上にメインのシューマンも素晴らしかったので、やっぱり書き留めておく必要が出てきてしまった。

N響の合奏の精度が極めて高く、感動的だ。
これはもちろん、音楽の構成を見事にまとめ上げながら、作品の魅力を鮮やかに引き出している指揮者鈴木さんの貢献も併せて称賛すべきであろう。