クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2021/2/19 バッハ・コレギウム・ジャパン

2021年2月19日   バッハ・コレギウム・ジャパン   サントリーホール
指揮   鈴木雅明
櫻田亮テノール)、加耒徹(バス)   他
バッハ   ヨハネ受難曲


本当はこの日、ユリアンナ・アヴデーエワのピアノリサイタル公演チケットを買っていた。
ところが、外国人入国制限措置により来日不能となり、公演中止。
かろうじて制限措置前に入国できたアーチストたちも、公演を終えると順次帰国の途に着き、こうして国内組オンリーによる公演がまたしばらく続くこととになる。
寂しい限りだが、劇場やコンサート会場がロックダウンで封鎖されてしまっている欧米に比べれば、まだマシな方なのかもしれない。

私自身は、たとえ国内組オンリーの公演であっても、「これは聴きたい!」という魅力的なプログラムをやってくれる演奏会なら、全然ウェルカム。喜んで会場に足を運ぶ。

本公演も、そうした公演の一つだ。
元々、アヴデーエワのリサイタルと日にちがバッティングした時、どっちに行こうか迷ったのだった。だから、アヴデーエワ公演の中止を知った瞬間、私は本公演のチケットを速攻で購入した。


さて、クラシックの作品群の中で金字塔的存在となっている「マタイ受難曲」に比べると、知名度や人気度は劣るかもしれないが、この「ヨハネ」も間違いなく傑作だ。
両者の比較は難しいが、マタイではソリストによる登場人物の告白の歌唱が多いのに対し、ヨハネでは合唱がより大きな比重を占めていて、これによるドラマチック効果を感じることが出来る。

BCJのオーケストラは室内アンサンブルのような小編成だし、合唱の人数も少ない。
にも関わらず、こじんまりとした印象に陥らず、上記のドラマチック効果をはっきりと感じることが出来るのは、指揮者の鈴木さんが、物語や歌詞の意図を汲み取り、発声や旋律、アンサンブルの響きなどに明確な方向性を指し示して、積極的に起伏を作り上げているからだろう。

こうして、単にスコアのとおりに演奏しただけでは表出されないような陰影が浮かび上がり、聴き手は、そこに対訳がなくても、受難の物語を肌で感じ取り、追体験することが出来るのだ。


それにしても、バッハ・コレギウム・ジャパンの近年の躍進は、目覚ましい。もしかしたら、コロナの影響を受けて厳しい環境に置かれている国内クラシック界の救世主的存在と言えるかもしれない。
と同時に、こうした状況だからこそ、今、バッハの敬虔な祈りのような音楽が、私たちの心に響き、深く染み入ってくる、とも言えそうだ。