クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2023/3/1 フィリップ・ジャルスキーによる「オルフェーオの物語」

2023年3月1日  フィリップ・ジャルスキー  東京オペラシティコンサートホール
ジャルスキーによる「オルフェーオの物語」
フィリップ・ジャルスキー(オルフェーオ)、エメーケ・バラート(エウリディーチェ)
管弦楽  アンサンブル・アルタセルセ
 
 
これまでバロック・オペラをあまり積極的に聴いてこなかったこともあり、ジャルスキーを生で聴いたことがなかった。彼の実力と人気、評判についてはもちろん承知していたので、いつかそのうち聴きたいと思っていた。
2020年3月に来日が予定され、いよいよ聴けるかと思ったら、例のコロナで公演は中止に。今回、ようやくその機会が訪れた。

本公演、有名な「オルフェオとエウリディーチェ」を題材にして作られたいくつかのバロック・オペラの中からアリアやデュオを抜粋し、それを単にリサイタル形式で歌う、というものだと思っていた。
実際は、想像とは一味異なっていて、確かにモンテヴェルディ、ロッシ、サルトーリオといった作曲家による歌劇「オルフェーオ」からの抜粋になっているが、きちんとストーリーを紡ぎながら順に曲を並べているため、全体として一つの歌劇作品のように仕立て上がっているのである。
ほぼ同時代の作曲家の作品からの抜粋であるため、「バロック」という時代のカテゴリーの中で作風が似ており、あまり違和感がない。一人の作曲家が書いた作品と言われても分からないかもしれない。しかも、簡単な演技付きのコンチェルタンテ。

企画としては、実に面白い試みだ。

プログラムによれば、今回の企画は既に2017年に実現され、ヨーロッパ各地で公演も行い、CDにもなっているのだとか。
前回中止となった2020年の公演では、ヴィヴァルディとヘンデルのオペラ・アリアを中心としたリサイタルのはずだったが、「ジャルスキーならではの練り込まれた企画の実現」という意味で、今回の公演はよりいっそうグレードアップし、興味深いものとなったと思う。


全体を通しての感想としては、ただ一言、「素敵」であった。
何かもう少し良い言い方、表現が無いかなと頭を巡らしてみたのだが、シンプルにこの言葉が一番ピッタリくる。
と同時に、この一言だけで終わり、「以上」としたくなる。

音楽。バロック・オペラとしての素朴な旋律が素敵。
上に書いたとおり、ジャルスキーによる企画構成が素敵。
アンサンブル・アルタセルセによる古楽演奏が、実に素朴で素敵。
もちろん看板のジャルスキーの歌唱も素敵だし、エウリディーチェを歌ったバラートも素敵。

すまん、そういうことで。


演奏終了後、会場ではサイン会が開催されていた。

そう言えば、先日のアヴデーエワのピアノ・リサイタルでも、同様に開催されていた。
コロナ状況から明けようという兆しが、着実に目に見えている。

会場で販売されているCDを購入した者のみ、というアナウンスだったが、それでも相当に長い列が出来たと聞く。(私はすたこら帰ったので、直接見たわけではない。)

ジャルスキーの熱心なファンならともかく、ライトな音楽ファンも、もちろんいたことだろう。それでもみんな、2千円、3千円というお金を払ってでも、「何としてもサインを貰いたい」という熱い想いなのだろうか。

そもそも、「CD購入者のみ」というルールって、本当にきちんと徹底されているのだろうか・・。ちゃっかり並んで、プログラムとか色紙とかに貰っちゃう、みたいな輩はいないのだろうか。
私はサインを貰わない人間なので、そこらへんの事情はよく知らない。
(日本人はお固い気質だから、ちゃんと徹底してやってるのかな(笑))

ヨーロッパの劇場でも、サインをもらうために楽屋入り口にて出待ちするファンは多い。
だが、当然「CDを買った人のみ」みたいな制限はほとんどなく、緩く自由にやっている感じである。
アーティストだって、そりゃもちろんCDを買ってくれた人に対する感謝は大きいだろうが、そうじゃないファンに対してもサインを差し上げたい、という気持ちを持つ人もいるだろう。
そこらへん、どうなんだろうね・・・。

それとも、日本では逆に「CD購入者のみ」という制限をかけないと、サイン会がとんでもなく長引いてしまうため、ある意味「やむを得ず、仕方なく」という事情なのだろうか・・・。