クラシック、オペラの粋を極める!

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思い出のドビュッシー「海」

 N響を聴き、前回ブログの鑑賞記で予告したとおり、思い出の詰まったドビュッシー交響詩「海」について書きます。

 親がクラシック音楽好きだったこともあって(現在のオタクの私に言わせれば初心者レベルの軽愛好家だが)、子供の頃からレコードをよく聴かされていた。(自らが積極的に望んで聴いていたわけではない。)
 さらにはブラスバンド部に所属したこともあって、音楽は自分にとって確かに身近な物であったことは間違いない。一方で、プロ野球選手に憧れる普通の少年で、「趣味」と言うにはほど遠かった。

 そんな普通の少年が、偶然ある曲に出会い、啓示を受けた。

 ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」である。

 中学2年生の時だった。それは神のお告げだった。

 聴いたのはレコードだったが、なぜこの曲を聴こうとしたのかは覚えていない。たぶん、‘たまたま’だったのだろう。
 だが、この曲を聴いたときのインパクトは今でもはっきり記憶している。それまでクラシック音楽はただ「受動的に」聴くものだった。きれいな旋律に気持ちよくなるだけだった。
 ところが、牧神を聴いて私は何かインスピレーションを受けた。不思議なイマジネーションが働いた。インスピレーション=印象。まさにドビュッシー印象派と呼ばれていた。

 以来、ドビュッシー(とラヴェル)は私の宝物となった。上記の「牧神」、「海」、それから「ダフニスとクロエ第2組曲」の3曲は、あたかも寝食共にするかのごとくいつも聴いていたが、中でも「海」が特にお気に入りだった。
 レコードで言うと、現在も名盤の誉れ高いアンドレ・クリュイタンス指揮のパリ音楽院管、ジャン・マルティノン指揮のフランス国立放送管。カラヤンベルリンフィルもよく愛聴したっけ。


 話は高校受験へ飛ぶ。
 私は某私立高校を受験した。学科の筆記試験のほかに面接があった。
 その面接の中で、面接官とこんなやりとりがあった。

面接官「君の趣味は何?」
私「ブラスバンドをやっているので、楽器演奏です。クラシック音楽を聴くのも好きです。」
面接官「どの作曲家が好きなの?」(おっ!?この人クラシック好きか??)
私「はい、ドビュッシーです。」(キッパリ)
面接官(ニヤッとして)「ドビュッシーいいよね。私も好きですよ。」
私(元気よく)「はいっ!『海』とか最高ですよね!」

 私はやや高揚しながら面接会場を出た。笑みを押し留められなかった。面接官の好印象は間違いない。「こりゃ受かったな。ふっふ。」確信した。(バカだねえ。ほんとガキだね、この俺も。)

 後日、自宅に不合格通知がやってきた。ガクッ。
 「なぜだあ?」と思ったが、面接官とたまたま趣味が一致しただけで受かるわけがない。要するにおつむが足りなかったわけだ。


 最近は昔のようなドビュッシー熱は冷めてしまった感があるが、それでも「海」を聴くと、ステレオにかじり付いて聴いていたガキ時代を思い出すのである。


 次回はプロコVn協について。