クラシック、オペラの粋を極める!

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思い出のプロコ「Vn協1番」

 ドビュッシーの「海」が私の10代前半のベストお気に入りだったとしたら、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番は、私の大学時代のベストお気に入り(の一つ)だった。

 当時、この曲がどれくらい好きだったか、というエピソードを一つ。

 年末に実家の大掃除を手伝うことになった。嫌々ながら。与えられた役割は窓ガラス拭き。
 やりたくない嫌な気持ちを紛らわせるため、私はヘッドホンステレオにプロコのVn協1番を録音したカセットテープを入れ、この曲だけを聴きながら作業した。
 テープのA面はパールマン、B面はチョン・キョン・ファの独奏だったと記憶している。まる一日の作業、6時間だか7時間だか知らないが、A面B面を繰り返し延々ひたすらこのテープを聴き続けていたのだ。
 一曲20分くらいだから、一時間で3回。6時間だったら18回、7時間だったら21回連続して聴いたことになる。それでも全く飽きなかった。おかげで窓ガラスはピッカピカ(笑)。


 大学に入学してオーケストラ部に入ると、私は高校までブラスバンドで吹いていたトランペットを断念し、ヴァイオリンに転向した。初心者として一から始めたので最初は大変だったが、努力の甲斐あって一年も経つと結構いろいろな曲が弾けるようになった。

 調子に乗った私は、そこで一大プロジェクトに着手した。そう、プロコのVn協ね(笑)。

 初心者一年たらずでは絶対に弾けるわけがない、今考えれば誰がどう考えても無謀なチャレンジであったが、「毎日少しずつ、ゆっくりから始めて徐々に早くしていけば、いつかそのうち弾けるようになる!」と勝手に信じた。噂によると、五嶋みどりやA・S・ムターもヴァイオリン始めて1~2年くらいでもう何かのコンチェルトが弾けるようになったらしいし、この俺様だって・・。

 もっとも「才能の無さというものはいかんともしがたい」ことに気付くのに半年もかからなかったわけであるが・・。

 当時練習した独奏パートの楽譜が手元に残っている。楽譜には、どの音をどの指でどのポジションで押さえるか、という運指番号が手書きで書かれている。もちろん私自身が記入した物だ。この楽譜は宝物として、一生保管することになるだろう。

 この曲を聴くごとに、青春時代に取り組み悪戦苦闘したこそばゆい思い出が甦る。同時に、この難曲をいとも簡単に弾きこなすプロ奏者にはただただ尊敬と畏怖の念がこみ上がる。