コンサート、オペラに通い続けること40年。
国内での鑑賞だけでは飽き足らず、海外にまで遠征する。
かつて、友人の結婚式の出席よりも、コンサートを優先したことがある。
その昔、付き合っていた彼女の誕生日祝いよりも、コンサートを優先したことがある。
そんな音楽鑑賞バカの形成初期過程に、吹奏楽との出会いがあった。たぶん、この出会いが自分の人生を変な方向に傾けた。
前回記事で、小学4年でトランペットを始めた、と書いた。
実は、親がライトなクラシックファンだった。家にはステレオがあって、いわゆる名曲のレコードが何枚もあって、クラシックを聴ける環境があった。
はたして、トランペットを始めたことで、より音楽に触れたい衝動が膨らみ、家にあるクラシックのレコードを聴こうと思ったのだろうか。
それとも、元々クラシック音楽に耳が慣れ親しんでいたおかげで、「楽器を吹いてみたい」に繋がっていったのだろうか・・・。
そこらへんの「どっちが先か?」については、正直、記憶が曖昧で、分からない。
まあ別に、どっちが先かは、大して重要ではないだろう。
楽器の演奏が上手くなりたいという向上心の一環で、参考までにプロの演奏を聞くようになった。
自分たちのバンドが演奏する曲の模範演奏を、レコードやカセットテープで聞くようになった。
そこで私は、「感動」というキラキラとした気分の高揚を発見した。
曲、作品の素晴らしさに気付き、もっと色々聴いてみたいと思うようになる。
同じ曲での別の演奏を聴いてみると、同じ曲なのに違いがあることに気付く。
「指揮者」という存在がいて、彼らが演奏者を導きながら、音楽を作り上げていることを知る。
必然の流れだった。
一緒に演奏したブラスバンド部の連中も、かけがえのない仲間たちだった。
どうやったら上手くなれるのか、どうやったら良い演奏が出来、コンクールで良い結果を出せるのか、みんなで話し合った。一緒に他校の演奏会や、コンクールの関東大会、全国大会などを聴きに行き、大いに刺激をもらいながら、わが校に採り入れられるようなヒントがないか、みんなで研究した。
演奏するだけでなく、オーケストラの音楽も聴き、好きな曲について、おすすめのレコードについて、それらの感想について、語り合った。
なんと楽しい日々、時間だったことか・・・。
(遠い昔を懐かしむ、完全にジジイの心境(笑))
大学に入学すると、一度は吹奏楽部の門を叩くものの、自分のレベルの限界を感じ、管弦楽部に入部し直して、ヴァイオリンを一から始めた。
だが、上達は比較的早く、3年生の時には2nd ヴァイオリンのトップ奏者にまで上り詰めた。
間違いなく、吹奏楽とトランペットの経験のおかげだった。
大学を卒業すると、演奏の方は完全リタイア。聴き専門の愛好家となって、現在に至る。
我が家の押入れの中の奥に、ヴァイオリンとトランペットがケースに入ったまま眠っている。
もう何十年も、その蓋を開けていない。「錆やカビなどにまみれていたらどうしよう・・」と怖くて、とても開けることが出来ない。
楽器を演奏した記憶は、私の中で生き続けているが、楽器そのものは、おそらく今後も、このまま一生、素敵な思い出とともに封印となり、眠り続けてもらうことになるんだろうな、と思う。