指揮 パーヴォ・ヤルヴィ
ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)
モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」
聴いていて、本当に心から楽しいと思える演奏だった。
理由は明白である。
演奏側が演奏を心から楽しんでいるからだ。それがしっかりと伝わってくる。
オーケストラの各奏者が、全身で音楽を表現しようとしている。その躍動感がストレートに音楽になっている。
しかも、各自が好き勝手に思うままに表現しているのではなく、スコアの指示、指揮者の指示を踏まえつつ、約束事の範囲内で、のびのびと自己主張をしているのだ。
指揮者からしたら、たまらないだろう。「こうしてほしい」と提示すれば、機敏かつ即座に音楽となって返ってくるのだから。
タクトを夢中になって振りながら時おり見えるヤルヴィの横顔は笑っている。楽しくて仕方がないという感じだ。
同じような笑顔を見たことがある。
ベルリン・フィルを振っていた時のラトルが、こんな感じだった。
それにしてもこんな楽しそうなヤルヴィ、N響ではあまり見かけない。
そうなると、ヤルヴィ、なんだかんだでこのオケとの相性が一番良いのではないか。一番適しているのではないか。
もちろん、そのように見えたのは、今回のプログラムが影響したのかもしれない。全部長調で明るい曲ばかり。オケの相性というより、単純に作品の魅力が輝いたと言えなくもない。
あとは、室内管というオケの人数の問題。掌の中でコロコロ転がすのに、ちょうどよかったりして。
そんな事言うと、「いやいや、ヤルヴィクラスだったら、大編成のオケもコロコロ転がせないでどうする?」とツッコミが入りかねないが、まあ固いこと言わず、とにかく「ヤルヴィとドイツ・カンマーは相性抜群!」ということで、結論。おしまい。