2018年11月16日 東京フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール
指揮・演出 アンドレア・バッティストーニ
合唱 新国立劇場合唱団、世田谷ジュニア合唱団
普通のコンサート形式上演かと思ったら、譜面台を置かず、歌手は演技を行い、照明、映像をも駆使した“ほぼ”オペラ上演。
ということで、ついに、ついに、日本で本格的なメフィストフェレが上演された。どうやら全曲演奏は初めてらしい。まさに感涙モノだ。
逆に言えば、なんでこんなに素晴らしい作品が今までまったく演奏されてこなかったのか不思議であり、もっと言うと、嘆かわしい。
(こういう時、私は毎回決まりセリフで不満ブー垂れる。「バカの一つ覚えみたいに椿姫とかカルメンばっかりやってんじゃねえよ」と。)
まあいい。
とにかくメフィストフェレ万歳。ボーイト万歳。果敢に採り上げてくれた東京フィルとバッティストーニ万歳。
ボーイト渾身の大作。畢生の・・と言いたいところだが、弱冠26歳で手がけた作品をそう呼んでいいのかは、よう分からん。
しかも、台本と音楽の両方を手がけ、スカラ座の初演時には自らタクトも振ったらしい。(とプログラムに書いてあった。その初演は、記録によると大失敗だったようだが・・)
信じられん。凄すぎ。まさに天才。
指揮者バッティストーニの大胆かつエネルギッシュな音楽作りが最高だ。
オペラは、時に、登場人物たちの心情表現を繊細に描く必要があり、これまでバッティが手がけたオペラ公演で、そうした部分に感心したことも多かったが、今回は合唱を含めたスペクタクルなド迫力に、ひたすら圧倒された。
それでいて、大仰、大雑把にならないのがいい。意外にもオーケストラは、ダイナミックなムードに押し流されず、かなりガッチリ手堅く演奏している。ここらへんもバッティのリードの優れた点。いや、東京フィルを褒めるべきか。
歌手では、ファウストを歌ったパロンビが、代役とは思えぬ安定感で魅了した。タイトルロールのスポッティも、何の不満もない。(彼は、先日行ったパルマでの公演に出演していた。)マリア・テレサ・レーヴァは、第一幕、第二幕は少し影が薄かったが、第三幕は絶唱だった。
世田谷ジュニア合唱団のみんなが暗譜で歌っていたのにはびっくりした。覚えるの、大変だったでしょう。頑張ったねー。