クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2015/4/26 チョン・キョンファ ヴァイオリンリサイタル

2015年4月26日  チョン・キョンファ ヴァイオリンリサイタル   サントリーホール
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)、ケヴィン・ケナー(ピアノ)
ウェーベルン  4つの小品
ベートーヴェン  ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、第7番、第9番「クロイツェル」
 
 
 演奏が始まると、会場は緊迫感に包まれる。カーテンコールでは笑顔が溢れリラックスモードなのに、演奏の瞬間その雰囲気は一変する。極度の集中力で演奏に没頭し、研ぎ澄まされた鋭い感覚で音楽の本質に迫る。
 チョン・キョンファはそういう演奏家である。昔も今も変わらない。私はそういう演奏家が好きだ。そういう演奏家が醸し出す張り詰めた空気の会場に身を置き、固唾を呑んで聴くのが好きだ。
 
 今回彼女の演奏を聴いて、一つ気が付いたことがあった。
 どの曲においても、どの楽章においても、楽器の音色そのものは非常に均一的でモノラルだということ。そういう意味では、ヴァイオリンというより、どちらかと言うとピアノの音に近いような気がする。
 音色はモノラルでありながら、音楽そのものは刻一刻と表情を変えていく。その様は墨と筆で刻まれていく孤高の「書」芸術のようで、その潔さは神々しささえ感じられる。
 
 ピアノとの相性も抜群にいい。音楽性を緊密に合わせた成果なのだろう。異なる二つの楽器があたかもユニゾンのように響く。実に神秘的である。
 ケヴィン・ケナーは良いピアニストだ。チョン・キョンファが絶大な信頼を寄せるのもよく分かる。
 
 プログラムによると、これから二人はワールドツアーに打って出るらしい。そのスタートが日本だそうだ。
 かつて一世を風靡した情熱のヴァイオリニスト。一時は引退も囁かれたが、奇跡のように復活した。世界は、彼女の伝説が今だ継続中であることを知るだろう。