ウェーベルン 4つの小品
演奏が始まると、会場は緊迫感に包まれる。カーテンコールでは笑顔が溢れリラックスモードなのに、演奏の瞬間その雰囲気は一変する。極度の集中力で演奏に没頭し、研ぎ澄まされた鋭い感覚で音楽の本質に迫る。
今回彼女の演奏を聴いて、一つ気が付いたことがあった。
どの曲においても、どの楽章においても、楽器の音色そのものは非常に均一的でモノラルだということ。そういう意味では、ヴァイオリンというより、どちらかと言うとピアノの音に近いような気がする。
音色はモノラルでありながら、音楽そのものは刻一刻と表情を変えていく。その様は墨と筆で刻まれていく孤高の「書」芸術のようで、その潔さは神々しささえ感じられる。
ピアノとの相性も抜群にいい。音楽性を緊密に合わせた成果なのだろう。異なる二つの楽器があたかもユニゾンのように響く。実に神秘的である。
プログラムによると、これから二人はワールドツアーに打って出るらしい。そのスタートが日本だそうだ。
かつて一世を風靡した情熱のヴァイオリニスト。一時は引退も囁かれたが、奇跡のように復活した。世界は、彼女の伝説が今だ継続中であることを知るだろう。