クラシック、オペラの粋を極める!

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2012/2/14 南西ドイツ放送交響楽団

2011年2月14日  南西ドイツ放送交響楽団バーデン・バーデン・フライブルグ   サントリーホール
指揮  フランソワ・グザヴィエ・ロト
神尾真由子(ヴァイオリン)
ウェーベルン  夏の風の中で
シベリウス  ヴァイオリン協奏曲
ベートーヴェン  交響曲第3番 英雄
 
 
 世の中の情勢変化に伴って行政改革、経営改革などが行われ、その結果、組織改編や吸収合併が行われるのはドイツも同じなようで、国内に「都市の数だけある」と言われていたオーケストラも、いくつかが統合されている。
 日本でいまだに「フランクフルト放送交響楽団」という名称で親しまれている有名なこのオケは合併に伴ってとっくに「hr交響楽団」に変わっているし、今回の公演のオケも、名前のとおり2つのオケが合併されたものである。
 それ自体は構わないが、日本語に直すとやたら長くて覚えにくいのが玉に瑕。(昨年末に聴いたジルベスターコンサートの伴奏オーケストラは、『ドイツ放送フィルハーモニーザールブリュッケンカイザースラウテルン』だった。舌を噛みそうだ。)
 
 さて、今回の南西ドイツ放送交響楽団であるが、バーデン・バーデンとフライブルグという、単なるドイツの地方オーケストラの公演が、果たして来日公演としてしっかり成立するのか、要するにお客さんが入るのか、実を言うと疑心だった。不景気だしねー。
 たぶん、オーケストラ側だって、自分たちがベルリン・フィルでないことは百も承知で、ちゃんとお客さんが聴きに来てくれるか、不安だったのではないだろうか。
 
フタを開けてみたら、スポンサーがしっかり付いてそれ絡みの招待チケットも結構出回ったせいか、客席はかなり埋まり、盛況だった。
 そうなると、オーケストラは俄然やる気を出す。指揮者も力が入る。彼らが一生懸命演奏していることは一目瞭然だった。ドイツの一地方オーケストラと言っても、そこはやはり本場。レベルは高い。
 
 かくして、素晴らしい熱演に会場が沸いた。いいコンサートだったと思う。メインのベートーヴェンは、ノンビブラートを駆使したいわゆるピリオド奏法だったが、これもまたうまくハマっていた。「どういう演奏スタイルにも対応可」であることをさり気なく示していた。
 
 
 ところで、この日の私の席は、P席の一列目で、目の前にティンパニーやホルンがいて、彼らがフォルテで音を出すと、こちらに直撃し、他の楽器の音がしばし聞こえなくなった。(ホルンは、ラッパのベルが後ろに向いているので、うしろ側の席は要注意だ。)
 
 まあ、安い席を買っているわけだから、文句は言わないし、言う権利もない。以前は、苦虫を潰したように「あっちゃー」と思いながら聴いていたものだったが、最近、こちらの聴き方に意識的に工夫を施すことによって、逆に楽しめるようになった。
 
 どうするかというと、ティンパニー奏者やホルン奏者などの気持ちになり、空想上、自分を演奏する側に置くのである。
 すると、奏者の息遣いや鼓動を感じることが出来るようになった。集合体の中の「個」の存在を改めて認識できる。また、聴衆として見る指揮者と、奏者として見る指揮者の、視点や感覚の違いにも気がつく。こうして、別の角度から見た新鮮さを感じることが出来るのである。
 
 読者の皆さんで、もし今回の私のような席に座る機会があったら、是非試してみてはいかがでしょうか。