クラシック、オペラの粋を極める!

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カルメンという役について

 主役をいつもソプラノに持っていかれてしまうメゾにとって、カルメンという役は頂点であり、目標かつ究極のチャレンジなのではないかと思う。だから、ついにこの役にありつけることになった歌手たちは一様に鼻息荒く語る。
「今までにない、新たなカルメン像を是非作りたいわ!」
 
そして続けてこう語る。
カルメンって、言われているような‘ふしだら’な悪女ではないと思うの。カルメンは待ち受ける運命に決して逃げることなく、自らの信念を最後まで貫く強い女性よ。私はそういう筋の通った一面を是非演じたいわ!」
 
 わかる。そう言いたい気持ち。
 せっかくの究極の目標がふしだらじゃあ、ねえ(笑)。どうせだったら、信念を貫く強い女性をしっかり見せたい。見た目ではなく内に秘めた情熱、気品、プライドを醸し出したい。そうして、カルメンという役を通じて、オペラ歌手の厳しい生存競争を勝ち抜いてきた「自分」を誇らしくアピールしたい。つまり、そういうことだ。
 
 なので、前回の記事にも書いたけど、色気を全面に押し出した、ただ妖艶なだけのカルメンは最近あまり見られなくなった。歌手の皆さんもどう演じるか、一生懸命考えてはいる。
 
 だが、口で言うのは簡単だが、実際はかなり難しい気がする。
 なぜなら、フェロモンプンプン、お色気全開、妖艶でちょいワル、必殺の誘惑の一瞥があるからこそ、男どもは抗えず、簡単に落っこちてしまうわけで、カルメンに惹かれるのは別に信念、気品、プライドを持つ強い女性だから、ではない。
 今回のボローニャスルグラーゼもそうだったが、「一見ふしだらそうだが、実は信念の女」を演じようとすればするほど、強烈なカルメンインパクトが色褪せてくる。清純なミカエラとのコントラストも曖昧になってくる。それに、たくさんの歌手がそこを目指しているので、ますます「新たなカルメン像」ができにくくなる。
 
 もし私が演出家だったら・・・・。
 
 もう徹底的に男どもを次から次へと誘惑してはポイ捨てする尻軽女に仕立て上げ、最後に悪行尽きて殺され、地獄に堕ちる。そう、女ドン・ジョヴァンニ!(笑)
 
 え?そんなカルメン誰も見たくもないって??
 
 やっぱ、そうだろうなあ(笑)。