クラシック、オペラの粋を極める!

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2017/3/26 新国立 ルチア

2017年3月26日   新国立劇場
指揮  ジャンパオロ・ビザンティ
演出  ジャン・ルイ・グリンダ
オリガ・ペレチャッコ・マリオッティ(ルチア)、イスマエル・ジョルディ(エドガルド)、アルトゥール・ルチンスキー(エンリーコ)、妻屋秀和(ライモンド)、小林由佳(アリーサ)   他
 
 
確かに私はなかなか上演されない演目を一生懸命追っかけていると、自分でも思う。
それは色々な作品を幅広く堪能したいと願っているからだ。定番以外の作品にも、素晴らしい物はたくさんあると知っているからだ。
だからといって、別に定番作品を避けているわけでも、見下しているわけでもない。いつだってウェルカム。カルメンだって椿姫だって、私は大好きなのだ・・・いや本当だってば。信じてよ。
 
そう、一般的に初心者向けと言われるルチアだって、私は大好きなのである。
だってさあ、いい曲じゃんか!
美しい音楽。琴線に触れる音楽。その音楽が、物語や登場人物の心情にピタリと寄り添う。そのおかげで、私たちはドラマの中にスッと入り込む。感動し、ドキドキし、涙する。
 
ルチアは、私たちを夢の世界へいざなってくれる魔法のような作品だ。
 
今回鑑賞して改めて思った。ドニゼッティの音楽は偉大なり。
だって、ストーリーなんて、ベタそのもの。そう思わん?
なのにこれだけ夢中になれる!
これ、音楽のパワー以外の何物でもないだろ?
 
今回は、そうした音楽のパワーをまざまざと見せつけ、証明してくれる強力なキャスト陣が揃った。
ていうか、よく揃えた。
新国立、やるときゃやる。やろうと思えば出来る。ただし毎度毎度は無理(笑)。
 
海外から招いた一流のソロ歌手たちを含め、「歌の出来こそすべての出来」と思いきや、私はベルカントオペラの神髄を見事に完成させた指揮者ビサンティの統率力を心から称えたい。
美しい旋律をきちんと浮かび上がらせ、歌手の発声コントロールをしっかり支え、伴奏のオーケストラで展開をばっちりリードする。これぞまさしくオペラ指揮者の仕事といった感じだ。
どうしても歌手にばかり目が(耳が)行ってしまうのに、今回、作品の魅力そのものにスポットが当たった。上にも書いたけど、「ドニゼッティの音楽は偉大なり」という感想を抱くことができた。やっぱりそれは、指揮者の功績だと思うのだ。
 
もちろん、主役ペレチャッコ・マリオッティについても、大いに語ろう。
この舞台に迎えられたのは、恐悦至極。そりゃ、世界にはD・ダムラウみたいな更なる本命がいるかもしれない。でも、所詮新国立ですからね。十分でしょう。もったいないくらいでしょう。
彼女、ウィーンでもロンドンでもパリでもニューヨークでも、この役歌えるよ。オレが保証する。(何の保証にもならんわな)
 
狂乱の場では、会場の全員が固唾を呑み、彼女の絶唱に聞き惚れた。(グラスハーモニカも良かったね)
 
それにしても、聴衆すべての視線と聞き耳を独占。歌い終わった瞬間に注がれる大ブラヴォーを一身に受けるプリマ・ドンナ。惜しみない努力によって達成された芸術の極みへの絶賛。舞台の上で、いったいどんな気持ちでその瞬間をお過ごしあそばれているのだろうか。
神に選ばれ、神に祝福された一人の歌手。素晴らしい人生ですねー。
 
I・ジョルディ(ほんとはホルディって言うじゃね?)もA・ルチンスキーも、その他の日本人歌手も、言うことなし。歌手、指揮者、合唱、オケ、すべてが整ったベルカントオペラ、万歳~!
 
演出は、かようにも音楽を引き立てたということで、文句が付けられない。
個人的には、どの舞台でもいつもいつもか弱いお姫様になってしまうルチアを、ズボンを履かせることで「愛のために命を賭する」信念を持った女性に仕立て上げた解釈は、とても気に入った。高く評価したい。