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2023/4/2 ハンブルク州立フィル

2023年4月2日  ハンブルク州フィルハーモニー管弦楽団   エルプ・フィルハーモニーハンブルク
指揮  ケント・ナガノ
合唱  ラトビア国立合唱団
カテリーナ・トレチャコワ(ソプラノ)、ユディット・クターシ(アルト)、スティーヴ・デイヴィスリム(テノール)、アレクサンダー・ロスラヴェツ(バス)
ブラームス  交響曲第3番
ストラヴィンスキー  バレエ音楽「結婚」


まずは会場のエルプ・フィルハーモニーについて。
いつか行きたい、聴きたいと思っていて、ようやく念願が叶った。
パリの「フィルアルモニ・ドゥ・パリ」もそうだが、客席の階を何層も上方に敷く分、どこの席からもステージを遠く感じない。このため、音が近くで鳴って、臨場感に優れる。施工にあたって最新技術の粋をふんだんに取り入れているから、音響ももちろん言うことなし。バランスが良くてクリア。率直に言って、いいホールだ。外観も含め、オープン当初から大いに話題になり、あらゆる公演がチケット完売になったというのも、納得がいく。


さて、わざわざこの公演を聴くためにハンブルクに飛んでやってきたのは、もちろん「そのエルプ・フィルハーモニーに行きたかった」というのもあるが、大好きな曲でありながら滅多に演奏されないストラヴィンスキー「結婚」のプログラムを見つけたからだ。

この曲が滅多に演奏されないのは、ある意味当然である。基本的にオーケストラの定期演奏会に馴染まない。プログラムに組み込むのは、相当の英断が必要と思う。
なぜなら、この曲は一般的な管弦楽曲とは違い、4台のピアノ+打楽器+声楽(ソロと合唱)という編成で演奏されるからだ。
オーケストラプレーヤーが参加出来るとしたら、打楽器パートのみ。
しかも、声楽パートはロシア語。

これ、オケの定期公演でやれないでしょ、普通。
それをハンブルク州立フィルはやった。えらい。ナガノ自身のアイデアだろうか。

ということで、公演の感想として、「期待どおり『結婚』が素晴らしかった」になるかと思いきや、大いに魅了されたのは、実はブラームスの方だったのだ。

もちろんホールの素晴らしい音響にやられたというのもきっとあると思うが、オーケストラの演奏の出来栄えが秀逸だった。なんつうか、ダシが滲み出た味噌汁みたいな感じで、コクがあり、音色が奥深く、味わい深いのである。ブラームスらしい素朴さと情熱の両方がしっかりと聞き取れた。

これ、やっぱりブラームスの故郷ハンブルクのオーケストラによる演奏だったからだろうか。
いわゆる伝統ってやつですかねえ。普段はオペラの伴奏をやっているのにねえ。(※ハンブルク州立フィルというのは、ハンブルク州立歌劇場の座付管弦楽団である。)

もしかして、ホールの雰囲気による気分の高揚で、気のせい?
それを言っちゃ、おしまいだわな。


一方で、指揮者の功績が大きく、ナガノの才能が如何なく発揮されたのは、やはり「結婚」。
変拍子の嵐なので演奏者は大変だと思うが、安定の揺るぎないタクトなので、決して破綻しない。メリハリも付き、機敏で鋭く、ストラヴィンスキーらしさがよく出ていた。
それにしても、面白い楽しい曲だなあ。


さて、そのケント・ナガノであるが、2015年から務めていたハンブルク州立歌劇場の音楽総監督の職を2025年度をもって退任することが発表された。後任は、イスラエルのオメール・メイア・ウェルバーとのことだ。