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2021/10/1 新国立 チェネレントラ

2021年10月1日   新国立劇場
ロッシーニ   チェネレントラ
指揮  城谷正博
演出  粟國淳
管弦楽  東京フィルハーモニー交響楽団
ルネ・バルベラ(ドン・ラミーロ)、上江隼人(ダンディーニ)、アレッサンドロ・コルベッリ(ドン・マニフィコ)、脇園彩(アンジェリーナ)、ガブリエーレ・サゴーナ(アリードロ)、高橋薫子(クロリンダ)、斉藤純子(ティスベ)


新国立劇場が創設されてもうすぐ四半世紀・・。
その間にロッシーニ作品が上演されたのは、定番のセヴィリアとこのチェネレントラの2演目しかない。たったの2つ。
何なんだろうね、ほんと、まったく・・。

チェネレントラの前回の新国プロダクションを観たのは2009年6月。
その時のキャストを見ると、アンジェリーナ役がV・カサロヴァ、ドン・ラミーロ役がA・シラグーサ、ダンディーニ役がR・デ・カンディア、ドン・マニフィコ役がB・デ・シモーネ、アリードロ役がG・グロイスベックとまあ、錚々たる顔ぶれ。
かつて新国立劇場は、世界の一流歌手を呼ぶ力があった。
あれから12年・・。
何なんだろうね、ほんと、まったく・・。


などと、とりあえずはまず、いつもの新国に対する不満をぶちまけた上で、昨日の新演出プレミエを振り返ってみよう。

昨日の初日を鑑賞した人も、あるいはこれからの2回目以降を聴く人も、必ずやほぼ全員が共通、意見が一致するであろう、第一の感想。

「アンジェリーナ役の脇園さんが素晴らしい!」

私は初めて彼女の歌声を聴いた。
もちろん、これまでに彼女の上々の評判は耳に届いていた。「どれどれ、どんなもんじゃい」と聴いてみたが、なるほど、その看板に偽り無し。ロッシーニ歌いとしての歌唱技術、装飾法、表現力など一様に秀でている。

その才能の開花に大いに納得。なぜなら、彼女はロッシーニ・オペラ・フェスティバル(ペーザロ)のアカデミー出身だからだ。

私はこのアカデミーの水準の高さを知っている。2012年ペーザロでのフェスティバルで、アカデミー研修生による「ランスへの旅」公演に接し、そのレベルに驚嘆したからである。
脇園さんがアカデミーに参加したのは2014年とのことなので、ちょっとタイミングが合わなかったが、もし目の当たりにしていたら、今の活躍をより嬉しく思ったことだろう。

ロッシーニ・ブッファ歌いとして世界的に名高いコルベッリ。コロナ禍で外来演奏家の来日が困難な中、彼が本プロダクションに参加してくれたのは朗報だった。今回もベテランならではの味わい、円熟の至芸を見せつけてくれたのは良かったが・・・歌唱技術的にはちょっと衰えを隠しきれなかったか。ま、仕方がないけど。

ダンディーニの上江さんはねぇ・・・。
日本人としては申し分ない。日本人としては、ね。
ロベルト・デ・カンディアで聴きたかったなあ・・・。
ダンディーニ、重要な役なんだよなー。
スミマセン。


粟國さんの演出。
良かったと思います。多分、私がこれまでに観た粟國演出の中で一番良かったと思う。

チェネレントラを映画に撮影するという読替仕立ては、アイデアとしては面白い。
ただ、別にそんなことをしなくても、舞台として完璧に出来上がっていたし、ファンタジー溢れる演出でお客さんを楽しませていた。
そうなると、常に舞台に登場する撮影班が、果たしてどこまで必要な存在だったのか、ちょっと首を傾げてしまうかもしれない。

読替演出を見せつけられると、私なんか、つい一生懸命深読みをしてしまうのである。
ドイツの劇場に行くと、知的なセンスを求められる舞台ばっかりだからね。
だから、冒頭の第一幕序曲の演奏の最中、映画撮影の舞台裏シーンが展開されると、そこに絶対何か布石が打たれているに違いないと思い込み、登場人物一人一人の演技の意味などを必死に頭の中で考えを巡らせたわけである。
ところが、それが単に「映画撮影の舞台裏の、忙しない一コマ」でしかないと後で分かった時、「なんだよ、それ!」と猛烈にツッコミを入れたい衝動に駆られた。

だったら、読替えなんかしないでストレート勝負だけで良かったんじゃないの? などと思うわけ。
だってさぁ、元々読替えじゃなくてストレート勝負が得意な演出家さんなんでしょ??(笑)