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2018/12/15 新国立 ファルスタッフ

2018年12月15日   新国立劇場
指揮   カルロ・リッツィ
演出   ジョナサン・ミラー
ロベルト・デ・カンディア(ファルスタッフ)、マッティア・オリヴィエーリ(フォード)、村上公太(フェントン)、青知英幸(カイウス)、糸賀修平(バルドルフォ)、妻屋秀和(ピストーラ)、エヴァ・メイ(アリーチェ)、幸田浩子(ナンネッタ)、エンケレイダ・シュコーザ(クイックリー夫人)、鳥木弥生(メグ)
 
 
断言しよう。指揮者カルロ・リッツィは、派手さはないが、かなりの実力派である。過去に聴いた公演から、自信を持って言える。
そんな彼が新国立劇場に初登場。主役にはR・デ・カンディアとE・メイという名歌手が揃った。これは是が非でも駆けつけなければならない。
 
まずはその主役たちについて。
デ・カンディアとメイは、4年前にフィレンツェで同演目を聴いた時と同じコンビ。
こういう時、「いやーオレさぁ、フィレンツェで聴いたんだけどさぁ、やっぱその時の方が断然素晴らしかったんだよねー」って、人が聴いてないものをやたら自慢したがる嫌なクラヲタいない??(笑)
 
ご安心あれ。デ・カンディアに関しては、今回の方が遥かにいい!
やはり、キャリアを重ねて年々向上し、役が染み込んでいるということなのだろうか。今や、歌と演技、役と歌い手が完全に一体化。泰然として、味わい深い。
デ・カンディアのファルスタッフで特徴的なのは、自身もインタビューで語っているが、決してブッフォーネ(道化)ではないこと。周りはバカにするが、本人はいたってマジメで、人生において愚直で一途であること。その一面をしっかり表現しているのが、素晴らしい。
で、そうして出来上がった雰囲気が、ヴェルディの音楽にマッチングしている。喜劇であっても、ヴェルディヴェルディなのだ。
 
デ・カンディアのロッシーニ・ブッファは、これはこれで実にあっぱれなのだが、歌い方も立ち振舞いもきっちり切り分けている。あくまでもヴェルディ。ここは見逃してはならないポイントであろう。
 
メイは、事前に不調のアナウンスが入ったが、なるほど、確かに絶好調時の歌唱ではない。
でも、麗しの美声は相変わらず魅力的だったし、何よりも落ちずに出演してくれたことが嬉しい。
 
さて、指揮者のリッツィ。さすがの一言だ。
作品を掌握し、ヴェルディのエッセンスを歌手、合唱、オケに注入して、上質にまとめ上げた。聞かせどころの旋律やハーモニーがポンポンと飛び出してくるので、聴いていてとにかく楽しい。
重唱のアンサンブルのまとまりも見事。
最大の聞かせどころであるラストの大団円は精緻の極みで、あたかも舞台にスコアが浮かび上がったかのような見通しの明るさ。
ここの場面、下手クソな指揮者がやると、ごちゃごちゃして何がなんだか分からなくなって、「まあとにかく、ハイおしまい!」になっちゃうのだが、リッツィは完璧な処理だった。
 
日本人歌手も大健闘だったが、それもやはりリッツィの指導の下に、音楽の中で役割に徹した成果ではないかと思う。
 
ジョナサン・ミラーの演出については、再演なので、今さら何かを言うものでもない。音楽がすべてを語ってくれたので、それで良し。
最初から「音楽がすべてを語る作品なのだ」ときちんと理解して演出した、というのであれば、なおそれで良し。