世界的な傾向として、メディアの多様化、趣味の多様化などで若者のクラシック音楽離れが進む一方、愛好家は高齢化している。
さらには景気動向、補助金カットや寄付の減少などで劇場の未来は決してばら色ではない。天下のメトロポリタンオペラとて他人事ではなく、決して安閑としていられない。
やり手の支配人ピーター・ゲルプは新たなファン獲得を目指し、全世界に向けたハイビジョンによるオペラライブ配信「メト・ライブビューイング」なるものを考案した。「メトが誇る演目を、お近くの映画館で是非どうぞ!」というものである。確かにわざわざニューヨークに行かなくてもメトのライブが見られるし、値段も実際のオペラよりもはるかに安い。
最大の問題はそもそもオペラという娯楽自体が世間一般的にマイナーだという事実。
ということで、果たして成功するかどうかは全く未知数だが、「トライしなければ何も生まれない」というその精神には大いに敬意を表したい。
さて、この日見たのは、ロッシーニのチェネレントラ。タイミング良く、初日が迫る新国立劇場の同演目の予習にもってこいだ。
歌手陣は盤石。ハイビジョンによる高画質のド・アップに十分耐えられる美貌のエリーナ・ガランチャが、その容姿だけでなく演技も歌唱も素晴らしい。そして脇をイタリアからアレッサンドロ・コルベッリと、シモーネ・アルベルギーニががっちりと固める。他のキャストも音楽と演技を一体化させながら舞台所狭しと動き回り、盛り上げる。いや~楽しい楽しい!!
これは演劇ファン、ミュージカルファン、映画ファン、その他一般の人達に見せたら、きっと新たなオペラのお客さんが増えそうだ。(問題はそういう人達が来るかどうかだが。)
そして、肝心のオペラファンは、改めてこの曲の素晴らしさを再認識することだろう。
同時に、超絶技巧の難曲であることにも気が付くであろう。
まるで早口言葉のようなパッセージ、高音から低音まで駆けめぐるコロラトゥーラ。舞台裏のインタビューで(なんと、インタビューアーはT・ハンプソン!)、ガランチャが「とにかく練習、練習、練習よ!」と言っていたが、さもありなんですね。
映画ではあったが十分楽しみ、終演後は友人のO君といつものごとく‘軽く一杯’に繰り出した。
時間が遅かったし、翌日はまた仕事なので、本当に「軽く」だったのに・・・。決して泥酔してたわけではないのに・・・。いったい何が起こったのでございましょうか??
帰宅のため、銀座から日比谷線で下り方面の電車に乗らなければならないのに、なぜか反対方向の上り電車に乗車。終点中目黒駅でようやく気づき、絶句。行けるところまで引き返したが、結局自宅には帰れなかった。ホテルに泊まって朝帰り。前夜の楽しかったライブビューイングの思い出ははかなくも露のごとく消え去った。宿泊代のため千円札8枚も財布から同じく消え去った。
だれか教えてください。いったい何が起こったのでございましょうか??
(「酔っぱらってただけだろが!」っていう突っ込み、歓迎します。)