2008年12月18日 プラハ 国民劇場
ヤナーチェク マクロプロス事件(イングリッシュ・ナショナル・オペラ協同演出)
指揮 トーマス・ハヌス
演出 クリストファー・オールデン
グン・ブリット・バークミン(エミリア・マルティ)、ジャンルカ・ザンピエーリ(アルベルト)、ヤン・マルクファールト(ヴィテク)、マルティン・バルタ(プルス)、アルスベータ・ポラチコヴァ(クリスティーナ)他
このオペラって演出家にとっては難しいと思う。基本的に室内での会話劇だから。舞台そのものをダイナミックに表現するのは困難。
今回の演出であるが、台本にない黙役を何人も登場させたり、それぞれ登場人物の立ち位置を工夫し、人間関係を整理し描写することで、訳アリで複雑な相関関係を解析しようと試みていた。それはそれでなかなか良く出来ていたと思う。
だが、何か物足りない。全体として薄っぺらい印象。
なぜか。
このオペラの核心のテーマである「不老長寿の神秘性」と「死ぬことが出来ない宿命を背負わされた人間の嘆き」について、思い切った踏み込みをしていないからだと思う。
そこにメスを入れた核心的なプロダクションを是非見てみたいものだが、そもそもこのオペラが上演されること自体が珍しいので、あまり無い物ねだりをしてもいけないだろう。
主役のエミリア・マルティを歌ったグン・ブリット・バークミンは、まだ若そうだったが、見事な歌唱でエミリア・マルティの苦悩を音楽表現していた。見たところまだ若そうだが、将来性ありそうな良い歌手だ。
最後に、せっかくチェコ語のオペラをチェコまで見に行ったのに、バークミンはドイツ人、アルベルト役はイタリア人・・・。日本の二期会みたいにオールチェコ人キャストにすればいいのにねえ、と思いました。