指揮 シャルル・デュトワ
2回行ったよ。当然さ。だって名演になることは最初から分かっていたからね。
N響ファンなら、2003年の「エレクトラ」が伝説とも言うべきぶっ飛びの超名演だったことはみんな知っている。あの時は私も腰を抜かした。初日があまりにも素晴らしかったので、慌ててその会場で二日目の公演チケットを買ったっけ。その後、チケットは瞬く間に完売となった。
あの公演が素晴らしかったのは、てっきり「デュトワの音楽監督退任記念」というスペシャルな位置づけがあったからと思っていたが、昨年の「ペレアスとメリザンド」だって、やはり息を呑むくらいの名演だった。コンサート形式上演の成功は、決して偶然ではなかったのだ。
ではデュトワの場合、オーケストラがピットに入る本格舞台上演のオペラを振っても同様かというと、それはまた別のような気がする。彼が振るオペラ作品は、実は「コンサート形式上演」でこそ威力を発揮するのでは? そんな気がするのだ。
今回のサロメにしても、デュトワが集中して音作りに励んでいるのは、歌手の歌に対してではなく、オーケストラに対してだ。サロメの音楽の特徴である華麗なる大音響と密度の濃いオーケストレーション。デュトワはこれらに決して圧倒されることなく、最新の注意を払いながら盤石のコントロールでテキパキと推進していく。
一方で、ソロ歌手に対してはかなりの裁量と自由を与えている。締め付けはかなり緩い。かなり対照的に見えるのだが、結果的にそうすることがベストの効果が得られることを分かっているのではないか。そう思う。
指揮者から全幅の信頼を与えられたソロ歌手たちは、見事なまでにドラマチックに輝いた。タイトルトロールのバークミンを始め、ベテランのべグリーとヘンシェル(この二人は5年前のサイトウ・キネン「サロメ」でもコンビだった)、みんな素晴らしかったが、私はシリンスのヨカナーンが絶品だと感じた。