クラシック、オペラの粋を極める!

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2008/12/16 ウィーン2 インテルメッツォ

2008年12月16日 アン・デア・ウィーン劇場
R・シュトラウス インテルメッツォ(新演出)
指揮 キリル・ペトレンコ  ウィーン放送交響楽団
演出 クリストフ・ロイ
ボー・スコウフス(ロベルト・シュトルヒ)、カローラ・グレイサー(クリスティーネ)、オリバー・リンゲルハーン(ルンマー伯爵)、ガブリエラ・ボーン(アンナ)他


 主役のクリスティーネがソイレ・イゾコスキから上記のカローラ・グレイサーに変わってしまったのは結果的にも本当に残念だった。しらけたように淡々と歌うため、全然面白くない。クリスティーネ夫人の気分や感情の揺れ動きと、それにぴったり合わせたシュトラウスの多彩な音楽表現こそがこのオペラの最大の魅力なのに、まるでそれが表現されない。
 演出によってわざと無表情のようにされているのかもしれないし、急に困難な代役を引き受けて大変だったのも大いに同情できるが、旦那役のスコウフスが生き生きと歌っているので、やはりグレイサーは分が悪い。
 そのスコウフスは味のある歌と演技で全体の水準を一人で持ち上げていた。見事、さすがである。

 演出のクリストフ・ロイは、クラウス・グートと同様に前衛的演出の旗手として最先端を走っている。

 今回の演出の最大の特徴は、ちょい役の人達(使用人や友人達など)がシュトルヒ家の騒動にみんな荷担していること。歌わないときでも舞台袖に引っ込まずに内から外から覗き込み、何らかに関わっている。それでいて、その存在に何か大きな意味があるのかというとそうでもなく、逆に見ている人のイマジネーションに存在意義を委ねている。
 ルネ・マグリット、ダリ、アンリ・ルソーなどの現代美術で、絵の中の不思議な抽象物について「これはいったいなに??」と尋ねたところで答えは「さあ??」みたいな、そんな存在の扱いである。
 そうなってくると、もう、天才にしか分からない抽象舞台芸術の領域であるが、何となくシュールでシニカルな作品を鑑賞して、言葉には表せないインスピレーションをもらったという感じだ。

 ただし、初心者は立ち入るべからずですね。これを初心者が見たら、オペラが嫌いになるかもね(笑)。やっぱり、イゾコスキは演出に嫌悪感を催して降りてしまったのかなあ。


今回の鑑賞でもう一つ楽しみだったのは、指揮者のキリル・ペトレンコ
 名前で分かるとおりロシア出身の若手だ。若手といっても、ベルリン・コーミッシェ・オーパーの音楽監督というポストを既に持っているし、ウィーン国立歌劇場もデビュー済み。

 期待どおり、ウィーン放送交響楽団から素晴らしい音色を引き出した。シュトラウスの難しい音楽は彼の手中に完全に入っていて、コントロールは万全だった。

 音楽的に耳だけで聴くと、これは将来大物になる予感が。
 ところが見た目で言うと、こんなこと言っちゃ悪いが「猿」(笑)。

 カリスマ指揮者は見た目も重要ポイントだと思うが、はたして彼は巨匠になるであろうか?ここはひとつ今後の活躍を注目しようと思う。