クラシック、オペラの粋を極める!

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2017/12/7 ダフネ

2017年12月7日   ウィーン国立歌劇場
R・シュトラウス   ダフネ
演出  ニコラ・ジョエル
ジーネ・ハングラー(ダフネ)、アンドレアス・シャーガー(アポロ)、ベンヤミン・ブルンズ(ロイキッポス)、ダン・パウル・ドゥミトレスク(ペナイオス)、ジャニーナ・ベヒレ(ゲーア)  他
 
 
ウィーン国立歌劇場では、ただいま特別企画「Strauss-Tage」を絶賛開催中。
直訳すると「シュトラウスの日」となるが、11月14日から12月21日までの期間、集中してR・シュトラウスを上演しており、要は「シュトラウス月間」ということだ。
この間、サロメナクソス島のアリアドネ、ダフネ、エレクトラばらの騎士、アラベッラの6本のオペラに加え、「ヨーゼフ伝説」などのバレエまで演目に並べるという、力の入れ様。
 
1か月内にシュトラウスのオペラを6本も上演してしまうウィーン国立歌劇場
すごいなあ。羨ましいなあ。
生まれた所間違ったとしか言いようがない。
 
この日のダフネは、15年以上も前に制作されたプロダクションである。
 
頻繁に上演されるような演目ではないゆえ、舞台装置などはしばらく倉庫で埃をかぶっていた感がなくもない。
しかし、決してポピュラーではないかもしれないけど素晴らしい作品がこうして蘇り、それを鑑賞できるのは、シュトラウスファンとしてこんなに嬉しいことはない。
 
今回、諸手を挙げて大絶賛したい立役者が二人。
指揮者のヤング、そしてアポロ役のシャーガーだ。
 
まずヤング。
シュトラウスを大得意とする彼女のタクトが、もうとにかくキレッキレ。出てくる音楽はもちろんだが、音楽なしで彼女の動作を眺めているだけでも満足できそう。それくらいタクトそのものが美しい芸術品だった。
 
まるで、情熱的なフラメンコダンサー。優雅であり、繊細であり、なおかつパワフル。
言っておくが、そこに「女性として」という観点はない。純粋に音楽を導き出す動きに惚れ惚れするのである。
もちろん引き出された音楽は、タクト同様にこの上なく熱く、そして官能的。音が渦を巻くようにうねっていた。さすがはシュトラウスの第一人者だ。
 
次にシャーガー。
二か月続けて彼の歌声を聴くことが出来たのは、何という幸せであろうか。劇場空間を瞬時に制圧する声は、まさに降臨してきた神アポロの役に相応しい。人々を陶酔させる魔法のような声である。
 
そのほかハングラー、ブルンズらの歌唱も申し分なく、脇役も含め、とにかくレベルの高いこと!
 
これぞウィーン。
そうだった、ここはウィーン国立歌劇場だった。世界最高の歌劇場なのだ。
プレミエでもなんでもないが、この高水準が普通にそこにあるスペシャルな場所だったのだ。
 
N・ジョエルの演出のポイントは、物語を「アポロの回想」にし、その手段として、分かりやすく劇中劇のような舞台装置を作ったことだろう。基本的にはオーソドックスであり、音楽にしっかりと集中できる。
 
一つだけ気になったこと。シャーガー演じるアポロ役に仮面をかぶらせるシーンが結構長かったこと。
演出上必要だったかもしれないが、仮面をかぶると歌手の表情が見られない。
歌唱芸術には、声だけでなく身振りや表情までが含まれる。これらは歌手個人の技術であり、結晶であり、神秘なのだ。それを隠してしまうのは、残念としか言いようがない。
 
最後に、劇場の各客席に設置されている字幕スーパーについて。
 
今シーズンから装置が取り替えられ、グレードアップが図られた。ディスプレーがより大きく見やすくなった上に、なんと6か国語に対応。嬉しいことに、それに日本語が加わったのだ。
この話、実はシーズンがスタートした9月に私に先駆けてウィーンに行ったお方から情報を聞いていた。驚いたが、とても大歓迎だ。
 
私の場合、鑑賞する演目の音楽はほぼ頭に入っている。だが、すべてのセリフ一つ一つまではとても憶えていない。
ところが、実はそうした一つのセリフの意味が、音楽の美しさを理解する手助けになったりすることがよくある。だからこそ、日本語字幕は重要であり、ありがたいことなのだ。
 
ちなみにそれ以外の対応言語は、ドイツ語、英語、フランス語、イタリア語、ロシア語。こうした欧州の主要言語の中に日本語が加わったということは、それだけ日本人がこの劇場に足を運んでいるという立派な証拠というわけである。
 
どうか、そのうち中国語に取って替わった、なんてことが起きませんように・・・。
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