

2024年7月21日 ブレゲンツ音楽祭2 祝祭劇場
ロッシーニ タンクレーディ
指揮 リン・イーチェン
演出 ヤン・フィリップ・グローガー
管弦楽 ウィーン交響楽団
合唱 チェコ・フィルハーモニー合唱団
アントニーノ・シラグーザ(アルジーリオ)、メリッサ・プティ(アメナイーデ)、アンナ・ゴリャチョーワ(タンクレーディ)、アンドレアス・ヴォルフ(オルバッツァーノ)、ラウラ・ポルヴェレッリ(イザウラ)
前日の湖上オペラ「魔弾の射手」は「ショー」だと断言してしまったが、屋内の劇場で上演されたこの日の「タンクレーディ」は、これぞ音楽祭に相応しい本格的かつ高水準なオペラだった。シュトゥットガルト、ハイデンハイムと観続けてきて、ここでレベルが一段グッと上った感じ。
やっぱり、歌手なのだよ。レベルを引き上げたのは、彼らだ。
シラグーサは、得意のハイトーンをバッチリ決め、さすがの貫禄。ゴリャチョーワは演技も上手く、なおかつ深い歌唱が染み渡る。メリッサ・プティも透き通るような声、安定したテクニック歌を転がせ、聴衆を沸かしていた。カーテンコールで一番拍手が大きかったのもプティ。
よくよく考えてみたら、ロッシーニを演奏すること自体、歌手に高水準が求められるということ。そういう意味で、本公演は「それに応えられる歌手を揃えた」ということであった。
指揮のリン・イーチェン。
思い出した、あー、彼女ではないか。
2013年8月ペーザロ・ロッシーニ音楽祭で、彼女が振る「なりゆき泥棒」を鑑賞したのだ。久しぶりだが、今回もやはりロッシーニというのは、彼女のレパートリーの核なのかもしれないし、彼女のロッシーニがオペラ界で評価されている証なのかもしれない。
今回のタンクレーディも、良かったと思う。隙が無く、テキパキとタクトを捌くので、歌手たちは安心して指揮者に任せ、歌うことが出来ただろう。ロッシーニらしい推進力もあって、音楽が生き生きと躍動していた。アジア系(台湾出身)なので会場の反応がちょっと心配だったが、終演後にはブラヴォーがたくさん飛んで、ホッとした。
演出は現代への読み替え。
物語の設定は、シチリアを舞台に繰り広げるマフィア組織同士の抗争。麻薬密売や暴力がはびこり、そこに警察の取り締まり介入が絡んで対立する。
何だか眉をひそめそうな読み替えだけど、これが意外にもフィットして違和感がなく、ちゃんと筋が通っていて面白かった。
また、アメナイーデという役は、オリジナルだと、家の都合により強制結婚させられそうになり、苦悶する可憐な女性だが、本演出では、「冗談じゃないわよ!」ときっぱりと父親に反抗する現代的な女性になっていて、そこらへんも面白かった。
聖地ペーザロの音楽祭でも、作品の復活蘇生にあたり、現代に読み替える演出がかなり多いが、ワーグナーと同様、ロッシーニも「今」に通じる普遍的な何かが潜んでいるのだと思う。