クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

フィリップ・ジョルダン

フィリップ・ジョルダン。天下のウィーン国立歌劇場が選び、そして託した男。2020年からの契約だそうだ。
 
うーーーん、なるほどー。そう来たかー。
7割納得3割意外って感じだが、結論としては非常に良い人選ではないかと思う。
 
3割の意外な点としては、ウィーン国立歌劇場にそれほど頻繁に登場しているわけではないので、一本釣りでありながら劇場としては未知数の側面があること。それから現在のパリ国立オペラ座とはパッパーノ&コヴェント・ガーデンのように長期政権を築くものだと思っていたこと、であろう。
 
一方で、7割の納得としては、オペラ指揮者としての彼のキャリアからすれば何の遜色もないこと。それから「ウィーン国立歌劇場」の立ち位置を考えた場合、ジョルダンという名前が浮上するのはある意味必然と思えることだ。
 
まず、彼のキャリア。
ウルム市立劇場のカペルマイスターからスタート。ベルリン州立歌劇場においてバレンボイムの下研鑽を積み、2001年から2004年までグラーツ歌劇場音楽監督、2009年からパリ国立オペラ音楽監督ジュネーブ大劇場やベルギー王立歌劇場、チューリッヒ歌劇場など一流歌劇場への客演も多数。私はザクセン州立歌劇場(ドレスデン)でも聴いたことがある。(ナクソス島のアリアドネ
このとおり、オペラ指揮者として叩き上げにより順調に出世してきた逸材と言っていいだろう。
 
次にウィーン国立歌劇場の立ち位置。
言うまでもなくこのオペラハウスはイタリア系のスカラ座に対抗する「独墺系の雄」。ならば音楽監督だって‘そっち系’に越したことはないのだと思う。
だが、それに相応しい人物が果たしているのか。
ウェルザー=メストが去ってしまった今、ティーレマンこそが牙城であり最後の砦だろう。しかし、彼はバイロイトドレスデンにがっちりと押さえられてしまっている。ペトレンコもベルリンに拐われた。今さらバレンボイムもないだろう。
だからといって、イタリアオペラ、フランスオペラ、ロシアオペラなどのスペシャリストたるイタリア人、フランス人、ロシア人が、果たして「ウィーンの顔」になれるだろうか。
 
それこそがウィーン国立歌劇場の立ち位置上の悩ましい問題だ。なぜなら、かつてアバドで失敗した苦い経験があるからだ。(アバドはイタオペ専門でないにも関わらず)
 
「独墺系の雄」という高級なブランドイメージがイタリアに染まってしまうくらいなら、いっそのこと日本人の方がマシ。こうしてあの人は選ばれた。(独断的推測)
 
ジョルダンの場合、パリ・オペラ座音楽監督でありながら、「チューリッヒ出身で、ドイツとオーストリアでキャリアを積んできた」というのがミソ。少なからずの加点要素があったことは容易に推測できよう。
 
わたくし事で恐縮だが、2003年9月グラーツ歌劇場で、当時まったく知らなかった若きジョルダン指揮のパルジファルを聴き、驚嘆したことを今も克明に覚えている。それくらい印象が鮮烈だった。マグマのような巨大なエネルギーに満ちた演奏で、音楽が唸りを上げていた。この時「この指揮者は、将来絶対に出世する!!」と確信した。その確信が現実化したのは、個人的に非常に嬉しい。
 
まずはとりあえず、今年の12月、オペラではないが、ウィーン響との初来日公演で、彼を再認識しようではないか。
この人の指揮、非常に力強くて熱い。威勢のいい音楽、聴けますぜ。