帰国の日。帰国便ミュンヘン発羽田行きの出発時間は、午後4時15分である。
電車は定刻どおりに発車したが、ザルツブルクを離れてから20分も経たないとあるローカル駅で突然停車し、車掌に「降りてください。バスに乗り換えてください。」と告げられた。
「は??」
理由もよく分からないまま、とにかく一斉にゾロゾロと降りていく他の乗客の後をついていく。
向かったのはバス停。ほどなくしてやってきたバスは路線バスではなく、明らかに代替のため用意されたリムジンバス。
よくわからないが、どうやらこれは事故でも、突然のハプニングでもなく、規定どおりのことらしい。私のような旅行者たちはポッカーンとした顔をしているが、ドイツ・オーストリア人たちは皆落ち着いている。そう言われてみれば、ザルツブルク駅で電車に乗った後、出発前に何度か車内アナウンスがあったが、ドイツ語分からないし、全然気に留めなかった。
隣に座っていたドイツ人に英語で聞いた。
「ミュンヘンには何時に着きますかね?」
「13時半くらいだと聞いてますよ。」
13時半か・・・。
そこから空港行きSバーンに乗り換え、空港到着は最終的に午後2時15分くらいか。帰国便の出発までちょうど2時間。
「大丈夫、大丈夫。余裕。間に合う。焦るな。大丈夫。」
このままミュンヘンまでずっとバスで行くのかと思っていたら、途中のプリーン・キームゼーという駅で全員降ろされた。ここから再び電車に乗れとの指示だ。指定された電車は午後12時44分。
ところが、この電車がまたまた遅れて到着・・。
結局空港に到着したのは午後2時30分であった。当初予定より2時間のオーバー。
帰国便の出発まで2時間を切ったわけだが、まあこれくらいなら通常の搭乗の範囲内。チェックインも問題なし、慌てることもなく、焦ることもなく、無事に帰国便に乗ることができた。
だがそれにしても。
こういうことが起こりうるから、帰国当日の移動には十分すぎるほどの時間を取らなければならない。
ていうか、本当なら帰国当日の移動は極力避けるべきなのだ。
常識とも言える教訓を改めて思い知った。
フランス、イタリア、スペインといったラテン国のいい加減さに比べ、ドイツは比較的物事がきちんと進む、まともな国と言われる。
だが、交通機関に関して言えば、ドイツも全然ダーメだ。ラテン国と大して差はない。遅延は日常茶飯事。ストもある。この日のような経験も、実は一度や二度ではない。
つくづく思う。当たり前のことが当たり前に進行する日本は、なんて偉大な国であることか。