ミュンヘン近郊、といっても70キロくらい離れているが、インゴルシュタットを訪れた。
決してメジャーな観光都市とは言えないが、ドイツの場合、多くの街には昔ながらの佇まいが残る旧市街がある。インゴルシュタットもそうで、こうした旧市街散策はそれなりに楽しめる。
州内乗り放題チケット「バイエルン・チケット」を買い、普通列車で向かう(特急電車は乗り放題の対象外)。
通常、その普通電車でミュンヘンからだいたい1時間弱くらいなのだが・・・またここでいつものとおりドイツ鉄道DBのポンコツ具合に大いに振り回されることになった。
まず、事前に立てた計画のとおり、ミュンヘン中央駅9時4分発の電車に乗り込んだ。
ところが、この電車が10分経っても15分経っても一向に発車しない。普通だったら遅延の原因や出発予定時間などを知らせる車内アナウンスがあって然るべきだが、ドイツ語でさえ一切無し。毎度のことで慣れているのか、他の乗客は皆ジッと黙って出発を待っている。
9時23分、私は意を決し、この電車から飛び出た。別のホームから出発する9時26分発の電車があることをリサーチ済だったからだ。
乗り換えた電車は定時に出発。咄嗟の決断は大成功と思った・・・が。
運行の途中、どこかで緊急停車。なんだか雲行きが怪しくなってきた。
15分経ってようやく動き出し、最寄りの駅に辿り着いたと思ったら、またそこで20分停車。ノロノロ発車して次の駅に着いたら、またそこで10分停車・・・。
結局、通常の所要時間の2倍かかって午前11時半にようやくインゴルシュタットに到着した。元々乗ろうとしていた9時4分出発から考えると、1時間半オーバーだ。
おそらく事故とか工事とかが原因だとは思うが・・・。あのさー、きちんと情報を提供しろっての。別に英語でとは言わん。ドイツ語でも車内アナウンスしてくれれば、翻訳アプリを使って乗客の誰かに聞くことが出来る。人間、「何が起きているのか、この先どうなるのかが、分からない」というのが、一番不安なんだ。
イライラしたが、でもこれがドイツ鉄道。私はこういうことが常に起こり得ることを体験的に知っている。日常茶飯事なのだ。
さて、気を取り直して、インゴルシュタット。
この市にはドイツが誇る名車の一つ、アウディの本社と工場があり、カー・マニアならその地名を聞いてピンとくる。
その一方で、我々クラシック・ファンがインゴルシュタットと聞いてピンとくるのが、伝説の天才指揮者カルロス・クライバーがここで指揮をしたというエピソードであろう。
晩年になるに従い、すっかり指揮をしなくなってしまった異端児クライバー。でも、人々は彼が指揮するのを待ち望んでいる。
そこで、かのアウディ社が、出演料プラス同社の高級車を一台プレゼントという破格オファー。このオファーにクライバーが首を縦に振り、久しぶりに指揮台に立ったというわけである。
題して、「クライバー、車を餌にして釣られた」事件(笑)。
クライバー自身が、無理難題のつもりで「この車で、このフル装備でプレゼントしてくれなきゃ、OKしないもんね!」と言ったら、満額回答されてしまい、もう後に引けなくなったという、まことしやかな噂が流れた。
とにかく、世界中の音楽関係者が驚いたが、ファンは狂喜乱舞。日本からも熱烈なマニアがここインゴルシュタットにやってきたという話だ。
当時、大きな話題となり、アウディはバッチリ名前を売った。宣伝効果を考えたら「高級車一台くらい、お安いもの」ってなところであろうか。
そのクライバーのコンサートが行われた会場が、インゴルシュタット市立劇場。
こちらだ。ジャ~ン!!

こうして見ると、外観は何の変哲もないただの会館であるな。
インゴルシュタットの旧市街を散策。



本当はアウディの本社・工場・ショールームがある場所まで行く予定だったが、不穏な気配の電車のことを考えてパスし、飯を食ったらすぐにミュンヘンに引き返すことにした。
午後1時半にインゴルシュタットを出発。案の定というか、またもや途中で電車がストップ。
「この電車はここから先に進むことが出来なくなりました。お客様は全員この駅で降りていただき、後から来る各駅停車のSバーンに乗り換えてください。」という緊急アナウンス。乗客が、やれやれというため息とともにゾロゾロと下車。結局ミュンヘンに到着したのは予定より30分オーバーの午後3時・・。
今日は完全にアウトの日だった。ま、こういうこともあるわな。なんたって、ここはドイツだから。