2022年7月2日 ソニヤ・ヨンチェヴァ リサイタル 東京文化会館
指揮 ナイデン・トドロフ
管弦楽 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
ヴェルディ 「イル・トロヴァトーレ」より 穏やかな夜、この恋を語るすべもなく
プッチーニ 「マノン・レスコー」より この柔らかなレースの中で
ヴェルディ 「運命の力」より 神よ、平和を与えたまえ
ベッリーニ 「ノルマ」より 清らかな女神よ
プッチーニ 「蝶々夫人」より ある晴れた日に 他
アンナ・トモワ・シントウ、ゲーナ・デミトローヴァ、ヴェッセリーナ・カサロヴァ、クラッシミラ・ストヤノヴァといったブルガリアの名花の系譜を引き継ぎ、世界を席巻している旬のソプラノ歌手が、初来日のお披露目を行った。
聴きたかった歌手だ。今や世界の一流歌劇場に欠かすことが出来ない絶対的なプリマ・ドンナ。私自身、2020年4月にニューヨークのメトで彼女が出演する「マノン・レスコー」を鑑賞する予定でチケットも買っていたが、コロナでぶっ潰れた。「コロナが収まったら、どこかで必ず聴かなくては」と思っていた矢先の来日公演。この機会は嬉しかった。
それにしても、ヨンチェヴァ、ここ数年であっという間に世界の頂に登り詰めた感がある。10年くらい前までは、ほぼ無名だったはず。
6、7年前のメトのシーズン開幕公演「オテロ」でデズデモナ役にその名を見つけたのが、おそらく私が彼女を知った最初だったと思う。
すると、その後も立て続けにメトに「トスカ」や「ボエーム」のミミ役を掴んでいき、その様子がライブ・ビューイングの映像で刻々と伝わってくる。
スターに駆け上がっていく過程の目撃だった。
この日のプログラム、彼女が放った挨拶代わりの一発、「イル・トロヴァトーレ」のレオノーラのアリアを聴いた瞬間、「あ! これ、正真正銘のホンモノだ!!」と唸る。迫力、芯の強さ、濃厚な声の艶と色、情感、すべてにおいて一流歌手の証だった。
なるほど、世界の歌劇場が彼女を放っておかないわけである。
わずか数日のうちに、ガランチャを聴き、続けてヨンチェヴァを聴ける幸せ。
アンコールで、「カルメン」の「ハバネラ」と「ジャンニ・スキッキ」の「私のお父さん」が被るのはご愛嬌。(メゾとソプラノでカテゴリーが異なるのに、なぜ(笑))
東京のコンサートホールは、再び「世界の一流演奏家が集う場所」に戻るのか。