指揮 マルク・ミンコフスキ
ブルックナーの既成概念を見事に壊した、画期的な快演だ。
フランス人だからなのだろうか。それとも主要レパートリーが古楽だからなのだろうか。
作品に対するアプローチ、視点が、他のいわゆるブルックナー指揮者と全然違った。
まるで南欧風のような色彩感、解放的な明るさ、自由に満ちたテンポ。
だからといって、緩さはまったく無く、細部にまで練り上げられた構成感が抜群だ。
爽快で新鮮なブルックナー。さすがミンコフスキだと思った。
クライマックスに向かうに連れて、不安が募った。
そんな不安は杞憂だった。カーテンコールでは熱烈なブラヴォーが飛んでいた。
もちろん、ネームバリューのある指揮者の演奏に、無条件に賛辞を示したお客さんもいるだろう。
だが、多くの聴衆がこの演奏を「素晴らしい」と受け取ったようだ。
これは、私にとっても嬉しいことだった。
でも・・・。
とある情報によると、この日、ブルックナー演奏も大得意のE・インバルが会場に来ていたらしい。で、演奏を聴いた後、ミンコフスキの楽屋を訪ねたらしい。
思わぬ大御所の表敬訪問にすっかり恐縮したミンコさん、なんとインバルに「どうもすみません」と謝ったんだとか。いや、聞いた話なので真偽不明だが。
それにしてもどういう意味で?
「神聖なブルックナーをこんなふうにしちゃってどうもすみません」てか??
本当だとしたら、なかなか笑えるエピソードである。