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2021/1/13 都響

2021年1月13日   東京都交響楽団   サントリーホール
指揮  エリアフ・インバル
ワーグナー  楽劇トリスタンとイゾルデより 前奏曲と愛の死
ブルックナー  交響曲第3番


今回のインバルの来日は、嬉しいニュースだった。コロナ渦で閉塞感が漂う中、このどんよりとした雰囲気に一撃をぶちかますような怒涛の演奏をやってくれる指揮者といったら、もう誰がなんと言おうとインバル様なのだ。

元々のプログラムは、ショスタコーヴィチ交響曲第13番だった。是非とも聴きたかった作品だったが、代わりに並べられたこの日のプログラムも絶品。インバルらしい堂々たる風格のプログラムだ。(バビ・ヤールは、来年に持ち越しとなった。)

ところで、前回ブル3を聴いたのは、2017年7月。同じく都響。ミンコフスキの指揮だったが、その会場にインバルが現れ、終演後ミンコフスキの楽屋に表敬訪問したというのだ。
インバルほどの大指揮者が別の指揮者の演奏を聴きに行くということ自体がなかなか興味深いが、それだけブルックナーに対する熱い思い入れがある、ということなのかもしれない。

そのインバルのブル3のエディションは、1873年ノヴァーク版。いわゆる「初稿版」である。一般的には「第3稿」がよく演奏され、ほぼ標準になっていると思うのだが、インバルは初稿版をレコーディングしていることもあり、こだわりがあるようだ。

私は初稿版は今回初めて聴いた。(と思う。)
正直に言って、第3稿版が自分のデフォルトになっているため、耳慣れという意味で、かなり戸惑った。全然違うと言っていい。違和感さえ覚えた。

だが、インバルの豪速球の演奏が、そんな戸惑いをぶっ飛ばす。圧倒的な説得力。まるで、「こっちが本物だ」と言わんばかり。

この圧倒的な説得力こそ、インバルの真骨頂だ。

一方で、音楽が強引で力任せかと言えば、決してそんなことはない。
インバルの演奏といえば巨大な造形の構築が持ち味で、そのためにオーケストラを豪快に煽っているかのようなイメージがある。
でも、タクトを眺めていると、案外シンプルに「こうだ!」とフォルムを指し示すことに徹しているのである。その形状が大きく、かつ非常に明確であるため、スケール感が余計に際立って聞こえるというわけだ。


それにしても、インバルさん、本当にお元気そう。全然変わらない。年を重ねれば、たいてい円熟したり枯れてきたりするのに、相変わらずギラギラしている。すごいよな。

次回、19日(火)、平日午後2時からのマチネー公演(ベートーヴェン・プロ)も行きます。当然っしょ。

仕事? 知るか、そんなの。