2024年9月14日 NHK交響楽団 A定期演奏会 NHKホール
指揮 ファビオ・ルイージ
ブルックナー 交響曲第8番
演奏を聴いて感じたことと、作品を聴いて感じたことを、とりあえず分別したい。そうじゃないと、鑑賞記として整理が付かず、まとまらない気がする。
まず演奏面についてだが、指揮者ルイージのきめ細やかなリハ作業と卓越した棒捌きにより、楽器群のポリフォニック特性が洗練され、クリアで見通しのよい響きに出来上がっていたことに感心した。
ブルックナー演奏では、響きを重ねるという「足し算」の作業でサウンドを構築させるパターンがあり、その場合、指揮者はあまり揺さぶりをかけず、バランスに細心の注意を払いながら、どっしり構えてタクトを振る。これがいわゆる往年の巨匠タイプ。
ところがルイージは、足し算で演奏の厚みを作るのではなく、克明なコントロールによって、あたかも和声の簡素化を図っているかのようであった。
こうしたアプローチは、間違いなく初稿版の採用によって決定付けられたと思われる。
規範とみなされているような従来型のイメージを払拭し、作曲家の構想の源泉に焦点を当てる新たな手法を導き出そうとした。このためにルイージはあえて初稿版を持ち出した。
その意味において、結果、彼は成功したと思う。
一方で、この初稿版を聴いた私個人の率直な印象は、戸惑いであった(笑)。
たぶん、初めて聴いたと思う。
すると、「ここで、こう鳴る」と思っていたら、そうならず、予想外の展開を目の当たりにして「あれ??」「ん??」「あらま!」「うそー!?」と混乱しっぱなし。
もう、ハース版やノヴァーク版が自分の頭の中に出来上がっちゃってるんだよねー。
だから、まさに肩透かしを食らい、唖然とした気分に陥ってしまった。
日頃から、演奏家による解釈の多様性については寛大に認め、「だからこそ面白いんだ!」なんてほざいている自分であるが、こうした作品のバージョンの変化に対しては、頭が追い付かないという現実・・・。
ううーーーん、まいった。