クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2016/4/29 ローエングリン

2016年4月29日  ウルム劇場
指揮  Joongbae jee
演出  マティアス・カイザー
ドン・リー(ハインリッヒ王)、エリック・ラポルテ(ローエングリン)、ザビーナ・マルティン(エルザ)、イ・カンキュン(テルラムント)、リタ・ルチア・シュナイダー(オルトルート)、トマシュ・カリュツニー(伝令)
 
 
やっぱり旅行最初の鑑賞にワーグナーを持ってくるのはキツイ。時差が慣れていない上に、鑑賞時間は膨大。日本時間のままなら、午前2時から7時にかけて目を開けて音楽を聴くわけだから、こりゃ修行に近い。
 
所どころで頭が傾き、意識が欠落。でも、これは最初から十分に予測していたこと。仕方がないのだ。仮にそうなってしまったとしても素直に諦めようと、自らに言い聞かせていた。
 
さて、「眠たくなっておきながら何を偉そうに」と突っ込まれそうだが、本上演を評するに、プロレベルは満たしているものの、やはりその中での若干の物足りなさを感じてしまった。
 
私は、地元民に愛され、根付いているローカル劇場の公演を観るのも大好きだ。
これまでもそうした数々の劇場に足を運んでいる。そのほとんどにおいて、上演水準には一定の満足感を得ていた。中には「とても地方の中小カンパニーとは思えない。日本の某歌劇団体を遥かに凌駕している」といった感嘆ものもあった。
 
だというのに、今回「やっぱりローカルの中小カンパニー相当だなあ」と認定してしまったのは、ちょっと残念。
 
例えば、オーケストラ。時々穴が開き、沼地にはまる。清流だと思っていたら、突然濁る。歌と伴奏がずれる。
 
歌手では、出演者の実力に差が激しい。今回、タイトルロールのラポルテ、オルトルート役のシュナイダーの二人は大健闘で素晴らしかったが、後はというと「・・・」。(別に3月に聴いたベルリン州立歌劇場と比較なんかしていないからね。)
 
ワーグナー上演はそう簡単ではないし、実力の程が如実に現れるということなのだろうか。
 
演出は、大幅ではないが、現代的な読替えである。
最大のポイントは、すべては年老いて死が目前に迫ったエルザの回想だったと仕立てたことだろう。それまで、可憐というより元気溌剌だったエルザが、最後(ローエングリンの正体語りの場面)でいきなり老けた姿となって現れた時はひっくり返った。最初は、ローエングリンとの約束を破ったことで、罰として魔法にかけられ、歳を重ねられてしまったのかと思った。どうやらそうではなくて、時間を遡っていたのだった。(多分)
 
ローエングリンが弟ゴットフリートをエルザの元に返すと、なんとそのゴットフリートはエルザに剣を向け、とどめを刺してしまった。つまり弟は早くに死んでいて、死期が近い姉のお迎えにあがったのである。これはなかなかの衝撃で、非常にユニーク、目からウロコだった。
こういうあっと驚く斬新な演出、好き。
 
 
ところで話は逸れるが、この日、劇場ボックスオフィスのカウンターに「ドイツ・ワーグナー協会・ウルム支部 入会のご案内」みたいなリーフレットを見つけた。「さすがワーグナー、さすがドイツ。大都市ではないウルムのような小さな都市にもこういう組織があるんだなあ」と感心して手に取った。
 
リーフレットに掲載された「後援者リスト」のメンバーが、凄い。
D・ダムラウ、J・カウフマン、B・ターフェル、A・カンペ、P・シュナイダー、C・ティーレマン、S・ヴァイグレ、W・マイヤー、C・エッシェンバッハ・・・藤村実穂子さんの名前も!
更にはH・ベーレンス、G・ヤノヴィッツ、H・ゾーティンといった伝説の歌手の名前まで!
 
これ、別に「ウルム支部」の後援者じゃないよね?(笑) 本家の方だよね?
でも、錚々たるビッグネームに惹かれて、思わず入会してしまいそう(笑)。