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2022/4/2 東京・春・音楽祭 ローエングリン

2022年4月2日  東京・春・音楽祭 ワーグナー・シリーズvol.13   東京文化会館
ワーグナー  ローエングリン(コンサート形式上演)
指揮  マレク・ヤノフスキ
管弦楽  NHK交響楽団
合唱  東京オペラシンガーズ
ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(ローエングリン)、ヨハンニ・フォン・オオストラム(エルザ)、エギリス・シリンス(テルラムント)、アンナ・マリア・キウリ(オルトルート)、タレク・ナズミ(ハインリッヒ)、リヴュー・ホレンダー(伝令)   他


東京・春・音楽祭にワーグナーが帰ってきた。

新国立劇場でも二期会でもワーグナーを聴くことは出来る。しかし、「本格的な」という部分で、少々の物足りなさがある。
ここで言う「本格的な」とは、要するに演奏の充実度、密度のことに他ならない。
聴き手の陶酔を誘う歌手の声の圧力。官能と陰影を漂わせるオーケストラの響き。作品を完全に手中に収め、グイグイと引っ張る指揮者の推進力。これらが完全一体に束ねられることが、すなわち充実度ということであり、本格的なワーグナー演奏の礎となる。

東京・春・音楽祭のワーグナー・シリーズで、「ニーベルングの指環」4部作演奏を完遂させたヤノフスキが、再び同シリーズに戻ってきてくれたのが、とにかく大きい。彼こそ、真のワーグナー芸術を体現化させることが出来る稀代の名匠である。
大胆かつ剛毅な演奏。洗練さを施すわけでもなく、叙情性を漂わせるわけでもなく、無骨で真っ直ぐな昔かたぎ職人の演奏だ。
こういう頑固な演奏を聴けるのは本当に貴重。残念だが、こういうタイプの指揮者は現代においてもうほとんど見られない。絶滅危惧種の指揮者、それがヤノフスキである。


N響の素晴らしさも絶賛しよう。響きの厚さ、そして音色の美しさ。
なんということであろう、彼らは、ワーグナーとは何たるか、どう演奏すべきか、分かっているのだ。
もちろん、ヤノフスキの強力な導きがあってこそ、であろう。
だがなんだか私は、彼らの中に、彼らのDNAに、ワーグナー演奏の系譜が刻まれているような気がしてならない。
サヴァリッシュ、スイトナー、H・シュタインなどと築き上げてきたドイツ系統の伝承。

おかしい。そんなはずはない。世代はとっくに入れ変わっているのだ・・・。
一体なぜ?
伝統という名の神秘、目に見えない摩訶不思議さよ。


歌手陣も充実。
特に、シリンスとナズミの堂々たる歌いっぷりが見事。瑞々しく澄んだオオストラムの声も美しい。

ヴォルフシュタイナーは、少々ムラがあったものの、別にケチをつけるほどでもない。
だいいち、「じゃあ他にローエングリンを誰が歌えるの?」って話。
K・F・V?
彼は唯一無二。そうやってないものねだりしてもしゃあねえだろ。


変更になってしまった当初予定のオルトルート、ツィトコーワ
戦争の影響だよね、これ。

プーチンが仕掛けた戦争は絶対に許せない。
でも、その影響によってロシア人が排斥されるのは、残念だし辛い。