クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2015/10/30 いきなりのトラブル

到着早々、トラブルに見舞われた。危うく窃盗事件に巻き込まれかけたのだ。

「危うく・・かけた」と書いたとおり、結論を先に言うと、盗まれることはなかった。未遂で終わった。だが、少なからずの被害を被った。

まったく私の旅行は、本当に毎度毎度何かしらが起こる。取り返しのつかない一大事にまでは至らなくても、「勘弁してよ」という小トラブルがいつも起こる。これだけ何度も出掛けて、相当な経験を積んいるはずなのに。これだけ何度も出かけるからこそ、そうした機会が多くなるということなのだろうか・・・。

事件の場所はデュッセルドルフ
早朝5時半にフランクフルト国際空港に到着し、そのまま鉄道でデュッセルドルフに向かった。中央駅に降り立ったのは、午前8時半のことだった。チェックインをするには早すぎるかもしれないが、せめて荷物だけでも預かってもらおうとホテルに向かう。予約したホテルは中央駅から徒歩でたったの7分。その7分の間の出来事だった。

「あのう、背中に液体が付いていますけど・・・」

30歳前後の男が声をかけてきた。ネクタイを締めたビジネスマン風だ。「えっ??」と思い、振り返って背中を覗く。よくは見えなかったが、確かにペンキのような液体が付着していた。
男はティッシュを取り出し、拭いてあげようとする素振りを見せながら、「これはひどい。よく見てご覧なさい。」と話し掛け、近寄ってくる。

察しの良い方、海外旅行に旅慣れた方はもうおわかりだろう。そう、こいつは強盗なのだ!親切なふりをして、巧みに上着を脱がしたり、荷物を下に置かせようとする。被害にあった人は突然のハプニングに戸惑い、動揺している。その隙に上着のポケットの中身や足元に置いた荷物を持っていってしまうという犯罪手口である。

私自身、海外でそういう窃盗犯罪が存在し、横行していることは情報として知っていた。だから、やられた時は「もしや!?」と思った。
しかし、話し掛けて来た男が強盗だという確信は、その瞬間は100%ではなかった。こちらも動揺していたし、背中のコートが汚れている人にただ声を掛けただけかもしれない。80%程度の疑いだったと思う。

もちろん80%が100%になるには、そう時間はかからない。

「わかりました。大丈夫です。結構です。ありがとうございます。」
私は相手を制しながら断りを入れる。にもかかわらず、なお「いやあ、これはひどいなあ。よく見てご覧なさい。拭きましょう。」と執拗に迫ってくる男。そして更に・・・。
様子を伺いつつ、私のバッグを奪い取ろうと近づいてくる怪しげなもう一人の男。仲間だ!

「ギルティ」

100%の確証に至った私が取った行動・・・とっさの行動だったが、はたしてこれが良かったことなのか、正しかったことなのか。後から考えてちょっと分からない。

その時私はポケットからカメラを取り出したのだ。証拠を撮ろうと思った。ついでにそいつらを写してやろうと考えた。犯人は当然撮られたくないだろうから、これで撃退できるかもしれないと思った。

思惑的中。カメラを向けた瞬間、奴らはダッシュで逃げていった。

ダッシュで逃げていったということは、うまく撃退できたと言えるかもしれない。ナイスなアイデアだったかもしれない。

だがしかし・・・。
もし相手が逆ギレして暴力を振るってきたら・・。ナイフなどの凶器を持っていたら・・・。
相手の神経を逆撫でさせかねない無謀な振る舞いだったかもしれない。そういう意味では自慢できないし、決して人にお薦めできない。

つまり、結果オーライだったということ。
こうした場合、私はどうしたら良かったのだろうか。時間が経った今も分からない。とにかく、その時はとっさの判断だった。なので、なんとも言えない。自分自身を非難できない。

さて、相手が逃げ去った後、私は人通りが多いところまで移動した。建物の壁に背をもたれて背後を取られないようにしながら、改めてコートを脱ぎ、被害状況を確かめた。想像以上に背中の広範囲にべっとり付けられていた。付着はハンドバッグやキャリーバッグにも。何も盗られなかったのは良かったが、コートや荷物を汚されたことに悔しさと怒りが込み上げた。

ホテルに到着。時間が早く、チェックインが出来なかったが、とりあえずトイレを貸してほしいと申し出た。もちろん事情をきちんと説明した上で。
洗面所で、コートの水洗いを試みた。かなりゴシゴシと拭いてみたが、汚れはまったく落ちなかった。ショック。悔しくて泣けてくる。
次にハンカチに液体石鹸を染み込ませて、それで拭いてみた。これは結構効いた。完全には落ちなかったが、醜い状態からは辛うじて脱した。

トイレに篭っての苦闘の洗濯時間は30分。こんなことに費やした時間は本当に余計なことだ、と心から悔やむ。しかも相当に手に力を入れたので、疲労困憊。

それでも私は「前向きになろう」と自らを鼓舞する。
何も盗まれなかった。コートの汚れも少し落ちた。楽しいはずの旅行が、不快な思い出で満たされてしまうのは嫌だ。だから、観光しよう。何事もなかったかのように。まだ午前の10時。旅行は始まったばかりだ。

こうして私はホテルを出て、観光に出掛けた。常に背後を気にし、5分ごとに後ろを振り返りながら(笑)。